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2022年10月20日 by 前田 章雄

エネルギーよもやま話15 水素は、なぜ必要なの?

水素は、なぜ必要なの?


 

 

「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。

 クリーンエネルギーとして、水素の話題を耳にするようになりました。水素は燃やしても二酸化炭素を出さず、水しか発生しない。ここまではよく聞くお話です。

その水素について、もう少し詳しく掘り下げてみたいと思います。

 

 

1.水素って、どこに存在しているの?

 

水素は、元素の周期表の「水兵リーベ、ぼくの船」で一番はじめに出てくる「水(すい)」のことです。気体の水素は化学式でH2と書き、世の中でもっとも軽い物質です。


 

   筆者作成

 

 

自然界にも水素分子の状態で存在はしていますが、量はそれほど多くありません。そのため、水素は人工的につくる必要があります。

 

水素の製造方法はいろいろありますが、水を電気分解したり、天然ガスを改質したりすることで水素を取り出します。どのような方法にしろ、人工的につくり出すわけですから、製造過程でエネルギーが必要になります。

エネルギーを投入してまで水素をつくるのは、投入するエネルギーより水素のほうが、価値があるからです。

 

たとえば、肥料の製造があります。

植物の生育には、栄養素として窒素が必要です。窒素は空気中に豊富にありますが、これを土壌に固定化して植物が利用しやすい形に変えてやる必要があります。自然界には窒素の固定菌が土壌にいますが、畑で農作物を大量育成するには、肥料として窒素分を人工的に与えてやらなければなりません。

そこで考えられたのがハーバー=ボッシュ法といって、空気中の窒素と水素を人工的に合成してアンモニアをつくる方法です。とても効率のよい肥料の製造方法なのですが、問題は水素をどうするか、です。


 

    筆者作成

 

 

肥料用の水素の製造は、一般的には天然ガスを改質して、そこに含まれる水素成分を取り出しています。化石燃料を原料として利用して二酸化炭素を排出し、そこに追加のエネルギーを投入してでも水素が欲しいのは、肥料としての価値があるからです。

 

では、水素をエネルギーとして利用するケース、つまり水素を燃やした際の発熱量(カロリー)を考えてみましょう。
当然のことながら永久機関は存在しないので、投入したエネルギー以上のエネルギーを水素がもつことは絶対にありえません。
言い換えれば、エネルギーとしての水素の価値は、水素がもつ発熱量(カロリー)以外にある、ということです。

 

 

2.なぜ、水素を活用しようとしているの?

 

水素は、製造過程でエネルギーを投入しなければ生み出すことができません。では、水素をエネルギーとして利用する価値は、いったいどこにあるのでしょうか?

 

話が変わりますが、電気は貯めることができない性質があります。

蓄電池は「電気を蓄える」と書きますが、電気そのものを貯めているわけではありません。電気をつかってある物質に化学反応を起こさせておき、電気が必要な時に逆の化学反応を起こして電気を生み出しています。

 

発電用ダムには「揚水ダム」というものがありますが、これも同じ原理です。

夜間などの電気をつかって、下流の水を上流のダムにポンプでもち上げておきます。そして、昼間の電気が必要な時に、上流に貯めた水を利用して水力発電します。

 

   出典)電気事業連合会

 

 

蓄電池も揚水ダムも電気を新たに生み出すものではありませんが、需要の変動に合わせて供給量を調整できる優れたシステムです。

 

ちなみに、太陽光や風力発電といった再生可能エネルギーは、自然任せで発電してしまいます。そのため、需要と供給を一致させることが、とても難しい。

そこで必要になるのが蓄電システムなんですが、蓄電池の大量普及にはコスト面やレアメタルなどの資源供給面で課題が多くあります。揚水ダムも新たな設置には課題が多くあります。

 

そこで出てくるのが、水素です。

再エネの余剰電力を用いて、水を電気分解して水素をつくります。水素は燃料電池によってもう一度電気に変えることもできますが、水素をそのまま燃やして熱利用することもできます。水素は持ち運びも可能ですので、活用用途は広がります。

余剰電力の蓄電システムとしては、水素はとても優れたキャリアだといえるでしょう。

 

 


 

3.水素をもっと活用していこう!

 

水素は蓄電システムとして力を発揮し、しかも水素のまま運んで燃やして熱利用もでき、さらにはエネルギーに再転換しても水しか出ないクリーンエネルギーです。

 

だからといって、「エネルギーをすべて水素に変えれば、水しか排出されないので問題解決!」と言い切るのは、いくらなんでも乱暴すぎます。

「この水素はどうやってつくられているのか」までキチンと考えてこそ、水素の価値を最大限に活用できると言えるでしょう。

 

近年、水素の製造方法として、褐炭と呼ばれる低品質の石炭を改質して水素を安く大量生産できないか、検討されています。この場合、投入するエネルギーには再エネ電力の利用が考えられています。

もちろん、原料に化石燃料をつかえば二酸化炭素が排出されますが、排出された二酸化炭素を地中深くの岩盤層に閉じ込めてしまえば、大気に放散されることはありません。そのため、化石燃料の採掘地近くで水素に加工する計画が進められています。

 

再エネ余剰電力の蓄電システムのひとつとして考えられた水素ですが、さまざまな発想を駆使することで、用途の広がりが期待されています。

次回は、水素の利活用について、さらに深堀してみたいと思います。

 

 

このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。

 

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