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2022年08月25日 by 前田 章雄

エネルギーよもやま話11 世界のエネルギー事情 我が道を突きすすむフランス

世界のエネルギー事情 我が道を突きすすむフランス


 

 

「エネルギーよもやま話」では、エネルギーに関する情報をワンポイントでわかりやすくお伝えしたいと思います。

 

 脱炭素化が叫ばれるなか、世界のエネルギー事情はどうなっているのでしょうか?

 前回のイギリスに続き、EUの大国フランスをみてみたいと思います。

 

 

1.フランスは、原子力王国だった!

 

 フランスの電源構成をみると、ほかの国にはない特徴が顕著に表れています。

 フランスでは、原子力発電の比率が突出して高くなっています。その割合は、なんと8割近く。これほど高い原発比率は、ほかのどの先進国をみてもありません。

 

 

 

  フランスの電源構成の推移 出展)資源エネルギー庁

 

 では、なぜフランスはこれほどまでに原子力を推進してきたのでしょうか?

 その最大の理由として、フランス人の国民性が挙げられます。

 民衆の力でフランス革命を成し遂げてきた彼らは、自立心・独立心がとても強いといわれています。時はオイルショックのころ、OPECが結成され石油の価格が急騰したことを受けて、原子力の利用に舵を切ったのです。

 原発の燃料となるウランはおもにアフリカから輸入していますが、原発は国内の備蓄などを利用することで、数年間程度は自立が可能となっています。

 

 原子力を推進した背景には、キュリー夫人を輩出したように放射能や原子力の研究が進んでおり、国民の理解が得られやすかったこともあります。

 もちろん、放射能汚染に関する恐怖心はフランスの人々にもあります。しかし、安全性をどのように確保しているかなど長い時間をかけて話し合い、ある一定のリスクを受け入れながらメリットを享受する方向を国民が選択した結果なのですね。

 

 原子力のシェアが高い電源構成をしている一方で、フランスでも熱利用はやはり化石燃料に依存しています。しかも、日本と同じように海外からの輸入に頼っています。

 石炭はアフリカから、石油はロシアからの輸入が多くなっていましたが、主力の天然ガスはロシアの比率を下げて、ノルウェー産やオランダ産の天然ガスを積極的に輸入してきました。

 

 エネルギーの自給を高め、多様性を確保しながら、カントリーリスクがある国からの輸入を最小に抑えるよう努力する。こうした考え方は、資源貧国の日本も学ぶべきことが多いと思います。

 

 

2.ヨーロッパは、国を超えて電力も融通しあっている。

 

 電気は、貯めることができないエネルギーです。

 蓄電池は「電気を蓄える」と書きますが、電気そのものを貯めているわけではありません。電気である物質に化学反応を起こさせておき、電気が必要な時に逆反応を起こさせて電気を生み出す仕組みです。

 再生可能エネルギーをつかってつくるグリーン水素は、これと同じ考え方です。余剰電力で水を化学反応(電気分解)して水素をつくって貯めておき、電気が欲しい際に水素と酸素を反応させて電気を生み出すというものです。

 もちろん、水素はそのまま燃やすことができるので、もう一度電気に戻さなくても直接燃やしたり、メタンを合成したりして熱利用することもできます。

 

 ちなみに、フランスが多く保有している原発というものは、動かしたり止めたりする発停が苦手です。また、以下の理由から、できるだけフルに動かし続けたい要求が働きます。

 原発は、莫大な設備投資によって減価償却が重くのしかかる一方で、燃料コストは安価に済む。つまり、動かせば動かすほどメリットが出る仕組みになっています。

 しかし、電気は貯めることができません。需要に合わせて供給も変動させる必要があります。でも原発はできる限り動かしたい。すると、余剰電力ができてしまいます。

蓄電池を大量に導入する方向もありますが、コスト面や技術面の課題も多くあるのが現状です。

 

 そこで考え出されたのが、国を超えた広域ネットワークを用いた電力融通です。

 ヨーロッパでは実質的な時差が2時間ほどあり、地域ごとに天候も違い、電力の利用形態もさまざまです。

 

 

 

 

 フランスで電力が余ると、例えばドイツに供給されます。もし天候不順でドイツの再エネ発電がさらに不足すると、北欧諸国から水力発電の電気を追加で購入します。

 逆に天候が良くてドイツの太陽光発電が余剰になると、周辺諸国に供給されます。ただし、余剰電力は買い叩かれる場合も多くあるので、注意が必要です。

「自分の国の天然ガス発電を止めて電気を購入したほうが得ならば、買ってあげますよ」

 このような駆け引きが日夜おこなわれていて、電力の需要と供給のバランスが保たれているのですね。

 

 電力網の広域ネットワーク化は日本でも進められていますが、日本を超えての他国との融通が難しく、国内だけでは時差もなく、しかも同じ天候になりがちです。台風がくれば日本中が雨や曇りとなり、前線が通過すると日本中が晴れになる。

 日本における太陽光発電とは、地域で同じ動きが増幅されてしまうのです。

 課題だらけの日本ですが、それだけにさらなる創意工夫と努力が必要なんですね。

 

 

 このコラムでは、エネルギーに関するさまざまなトリビア情報を、シリーズでお伝えしたいと考えています。次回をお楽しみに。

 

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