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2022年07月06日 by 弘本 由香里

明日のコミュニティ・デザイン 人と瓜の遥かな旅路編



つづく・つながるってどういうこと? 伝統野菜に聞いてみよう! 

こんにちは、エネルギー・文化研究所の弘本由香里です。
私は都市居住とコミュニティ・デザインを中心に、実践的な研究活動に取り組んでいます。主なフィールドの一つが、大阪の歴史の原点で、都心部を南北に貫いている上町台地界隈です。この上町台地を故郷とする伝統野菜“玉造黒門越瓜(しろうり)”を、地域の内外で育て合い、ともに食し、新たな縁を紡いでいくささやかな活動を10年以上続けています。しろうりとコミュニティ・デザインの意外な関係。伝統野菜が紐解いてくれる、コミュニティ・デザイン論をご紹介します。


1. そもそも、伝統野菜ってなんなの?

伝統野菜は、地野菜とか在来野菜、あるいは在来品種といった呼び方をされることもあります。一言でいえば、特定の地域に適応してきた遺伝的系統を持つ野菜ということになります。厳密にいうと、「伝統野菜」と名付けられているものは、種子等の来歴が明らかで、概ね100年以上前から栽培されている、地野菜・在来野菜のうち、自治体等が産業振興や地域振興等を目的に、認証制度やブランド化などの取り組みをおこなってきたものに相当します。

地域の気候風土に適応してきたはずの在来品種が、なぜわざわざ見つけ出して守らなければならいほど希少なものになってしまったのでしょう。戦後、食糧の安定供給のために、生産や流通に適した品種が開発されて、全国各地で在来品種が姿を消していったのです。食糧の安定供給は、現在も一段と重要なテーマです。一方で、世界的な食糧危機を乗り越えていくためにも、実は種の多様性を確保していく必要性があることが、差し迫った課題として認識されてきています。


2.玉造黒門越瓜(しろうり)の遥かな旅

現在、日本国内で、何らかの形で継承活動が行われている伝統野菜・在来野菜は、1000種類以上あるだろうと言われています。大阪府・大阪市が認証している、なにわの伝統野菜の一つが、“玉造黒門越瓜(しろうり)”です。

それにしても不思議な名前です。「しろうり」なのに「黒門」ってなぜ?「越瓜」と書いて「しろうり」と読むの?と、疑問は尽きません。

江戸時代に産地だった「玉造」に大坂城の玉造門・通称「黒門」があったため、この瓜の愛称が「くろもん」に。越(えつ)の字が当てられているのは、古代の越南(えつなん)、いまの中国の広東省あたりが原産地だったことを表しているとされています。“玉造黒門越瓜(しろうり)”の先祖は、遥か海を渡って大阪・玉造の地にたどり着いたのです。


「上町台地 今昔タイムズ」vol.6 では、江戸時代になにわ名物として愛された、
“玉造黒門越瓜(しろうり)”の背景にある、政権交代や奈良・伊勢への旅の出入口で、
人が行き交ったまちのドラマを描き出しています。

https://www.og-cel.jp/project/ucoro/pdf/timesVol06.pdf

 


さらに、瓜という種と人類の歴史はもっともっと遠大です。元をたどると北アフリカ、西アジアあたりが誕生の地で、ユーラシア大陸全体に広がって、ヨーロッパ系はメロンと呼ばれ、アジア系は瓜と言われるようになったそうです。

瓜の壮大な旅は、我々人類や、その他の動物、雨や風、川や海の流れなど、生き物や自然現象と道連れで行われてきました。地域ありきで伝統野菜が生まれたというより、時間と空間を越える、偶発的な変化のメカニズムや生存の知恵によって、伝統野菜や地域の文化が形づくられ、受け継がれてきたのです。

3.伝統野菜に学ぶ、つづく・つながることの本質

近代化が進む中で多くの在来品種が市場から淘汰され、姿を消していきましたが、生き続けてきたものにはどういう背景や理由があるのだろうと考えてみると、いくつかの要素に気づかされました。
1つには種・資源を評価する目利きがいたこと。2つ目は大規模で均質的な農業に席巻されなかったこと。そして、独自の価値をつくって市場を獲得したこと。同時に、おすそ分けや相互扶助の文化が生きていること。さらには、食や農の多様性を支える、ローカルな食文化・生活文化が大切にされていること。こうした文化的価値や文化的装置の役割を自覚しているかどうか、地域の中で活かされているかどうかが、伝統野菜が存続する基盤になっています。それは、持続可能なコミュニティ・デザインのあり方にも重なります。
ちなみに、大阪・玉造では、いったん姿を消した“玉造黒門越瓜(しろうり)”が、地元の玉造稲荷神社さんの尽力で、約100年の歳月を経て復活しました。そこで、エネルギー・文化研究所では、改めて伝統野菜の特性に注目して、都市の暮らしの中でしろうりを介した、小さな縁づくりに取り組んでいます。バックグラウンドの異なる人達が出会い、課題や知恵を共有することのできる苗床になればと願って。人と瓜の遥かな旅路に思いを馳せると、変化を受け入れること、多様性を担保することによって、つづいていく・つながっていく、コミュニティ・デザインの本質が見えてきます。


2020年以降、コロナ禍で生活環境が大きく変化する中、
インスタグラム「みんなの瓜畑」の開設やオンライン収穫祭を通して、
地域や世代を越えて栽培の知恵やしろうり料理の楽しみ方、日々の想いなどを共有しています。
https://www.instagram.com/min_uri_since2020/




 


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