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2022年06月01日 by 池永 寛明

【交流篇】日本再起動への方法 ― アジアの未来(下)

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(江戸時代、日本唯一の海外との窓口「長崎・出島 和蘭商館」再現模型) 


「失われた30年」の30年の意味はなにか?30年という時間は世代のサイクル。にあたる。本格的なムーブメントはそこから15−25年ずれて訪れる。たとえば戦後生まれの「団塊の世代」が社会にでたのは1960〜65年。社会が大きく変わったのは、その15〜25年後の80〜90年代。となると、30年の「失われた日本」の本当の生活・社会影響は、これから15〜25年先である2035〜2040年に顕われてくることとなる。 

 

30年という時間軸は、子どもが生まれ、育ち、自立して、前の世代の価値観を否定する姿に一致する。現在のサイバー空間の主役は10代から30代である。社会に目に見えるムーブメントは動きだそうとする段階ではあったが、明らかに次の世代に主導権が移ろうとしている。そこにコロナ禍×ウクライナ紛争という大変革がおこった。これまでをリセットして、新たな日本への再起動のチャンスが訪れているが、現在をリスクと考えるかチャンスと捉えるかが問われている。

 

 

1.元マレーシア首相が伝えようとしたこと

 

今年1月に心臓疾患でICUに入院していた96歳の元首相が飛行機に乗って東京に来てスピーチをした。
彼は日本に何を伝えようとしたのか。ウクライナ紛争を契機とした「世界大戦の恐れ」を懸念しつつ、『ルックイースト』をマレーシアはさらに強化する必要がある」と語ったマハティール・マレーシア元首相の本心はなんだったのだろうか?


この「イースト」は日本だけではない。当然ながら、中国・韓国からの学びも含まれている。マハティ―ル元首相の「ルックイースト」は、日本の大学機関などの誘致も含んでいるが、「失われた30年」において世界およびアジアでの存在感が低下し自信喪失している日本へのエールとも考えられる。日本通であるマハティール元首相の想いは、「変えてはいけないことを変えようとしている日本、変えなければいけないことを変えられない日本」への叱咤激励ではなかったかと感じた。

 

 

2.日本のチカラはすごいのか?

 

「メタバース」についての報道を見ない日はない。かつてのインターネットの誕生による時代の転換のように、iPhone 3G販売による時代の転換のように、現在の私たちはコロナ禍でのテレワーク・リモートワークを前倒したオンライン社会突入という社会システムの転換期にいる。
つづいてメタバースが急浮上した。ユニバースに対するメタバース、メタ(形而上)な世界は、従前からのアバターの発展形とも捉えられるが、社会的な構造変化の意味は大きいと考えられる。


そのメタバースの論点は、「コンテンツ」であると喧伝されている。コンテンツ勝負ならば、日本のこれまでの漫画やアニメなどの文化力のある日本は強いという文脈で、これからの産業・文化戦略が語られている。しかしそのメタバースへの語りは本当にそうなのか?


そこに、マハティール元首相のスピーチを聴いた。アジア各国首脳のスピーチを聴いた。彼らのスピ―チの背景に、日本への「叱咤激励」が漂っているような気がした。日本のなにかが変わった。そのなにかとはなにか。ある記事を紹介したい。


かつて世界にその名をはせた「匠の精神」の日本で、偽装が次々と発生しているのはなぜかを中国人の研究家が分析した。


中国の研究家の論点は3つ。「①経営の圧力が高まるなか、日本企業が焦りを募らせ、危険な橋を渡ろうとしていること ②日本企業内部のガバナンス、監査制度が形骸化している。世界の急速なグローバル化によって時代遅れのものになっているにもかかわらず、時代の変化に適応しようとしていないこと ③日本の政界で隠蔽・不正が相次いでいることが、企業内のルールの無視や信用の軽視といった雰囲気を助長させていること」

 

この外から見た日本の実相として浮きあがってくるのは、日本の劣化である。その姿が世界に、もはや隠せなくなったのではないか。

 

 

3.想像できない。創造できない日本

 

この討論を読む前提がある。日本のチカラがおちているということ。日本社会において、物事の考え方、現状の把握、先行きの見通し、戦略づくり、ものづくり、もてなしのチカラがおちているということ。

 

なぜそうなったのか。インプットからアウトプットを導く「プロセスがブラックボックス化」していることが日本のチカラを低下させている原因のひとつである。


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戦前から戦後日本、とりわけこの30年のITを核とした「技術偏重」が社会プロセスのブラックボックスを助長した。この技術でなにができるのかと考える人・組織が増えた。何事も「技術から」考えるようになり、「人から」物事を考えることをしなくなった。見る風景が変わった。聴く風景が変わった。それがどうしたという人がいるが、日本においてとても重要なチカラである。想像力と創造力が落ちた。読み方は同じだが、意味は全くちがう。

 

その想像と創造である。想像して、創造する。この順番が大事である。想像することが、すべての出発点・基盤である。「物事を考える、現実をつかむ、先を見通す」うえで、「想像」して「創造」することが大事。これが何事においても必要不可欠なチカラだが、この想像力が日本社会全般で弱くなった。「日本の失われた30年」の原因のひとつはこれである。

 

にもかかわらず、やれパーパスだのミッションだのアート思考だのロジカル思考だのクリエイティブ思考だの、流行りのビジネス用語ばかりに目が向き、なんとなく格好いいからと意味も分からず語ってみたり、上からそれでやってみたらと言われて、なんとなくやってみる。

 

しかしそれは他人の知らないコトを語ったり絵にしたりという優越感は覚えるものの、それは為にする議論にすぎない。
そもそもが見えていない、全体がわかっていない。だから部分最適に陥り、本当のことにたどりつけない。そんなことばかり、この30年、日本はやってきた。欧米の流行りの方法ばかりにとらわれ、本質をつかまず、表層をなぞるばかりで、なにも解決できなかった。むしろ後退した。

 

なぜそうなったのか、なにが課題なのか。図に描いたら、こうだ。この流れが淀んでいるのだ。


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とりわけネット・スマホ時代に入って、プロセスが中間省略され、ブラックボックスになった。このプロセスのなかで、最も大切な「想像して創造する」、この中核エンジンが機能しなくなった。

 

どうしたらいいのか。このプロセスを一気通貫にまわす。「社会・市場へのアクセス」し、「データ・情報・背景情報」を収集し、デザイン思考やアート思考を駆使して、市場を理解して本質を読み解く。そして多様な知との交流を通じて「発想」し、自らの知的基盤との融合によって「類推」し、そこから得られた情報・知の編集・結合を図り、戦略・計画を立案する。それを適確に意思決定し、実践する、実行する。試行錯誤して、できたこと・できなかったことを総括する。フィードバックして、またプロセスをまわす。それを繰り返す。

 

この一連のプロセスを深く、早く、そしてまわしていく。このプロセスのなかでも、中核エンジンといえる「想像して創造する」を如何に組み込み直せるかが鍵となる。この30年、ネット・スマホ化によって、その前工程、後工程のブラックボックス化により、「想像力」が弱くなった。だから本当の「創造」ができなくなった。

 

私たちはいま、コロナ禍後・ウクライナ紛争後という大きな時代の変換期にいる。そう思うかどうか、これまでのビジネスプロセスをリセットし、再定義して、再構築するチャンスが訪れていると思うかどうか。その岐路に私たちは立っている。

 

 

(エネルギー・文化研究所 顧問 池永 寛明)

〔note日経COMEMO 5月31日掲載分〕

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