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2022年04月21日 by 池永 寛明

【起動篇】あなたが結果を残せない理由 ― ビジネス実践編(3)

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「これからは学びが大切」 そりゃ、そう。じゃ、今まではなんだったの? 「これからは社会に出てからのリスキング(学び直し)が必要」 そのとおり。しかし学びは人に言われてするのではなく、自らが学ぶものじゃないの?「これからはDXだ、データサイエンスだ」 それはそう。しかしそれと同じく、いやそれ以上に、社会・市場・お客さまのことをつかむことが大切じゃないの? それを知らずに、まずデータサイエンスという人が多い。

―― みんな、同じことをいう。そしてみんな、それを疑うことなく、そのままを受け入れる。しかし言うだけで、それを本当はしない。どうなっているのか?

 

 

1.なにをいうてるのかわからん

 

若い人はとても堂々とプレゼンテーションする。スクリーンを背にスマートに語る、ジェスチャーをまじえて感情豊かに訴求する ―― “すごい!私たちの若い時代には考えられないくらいの完成度だ!この子たちはこれからどんな人材になるんだろう!?”と誉めそやす人がいる。たしかにプレゼン技術のレベルは高い。しかし彼らが語る内容は上っ面で、リアリティがないことが多い。そして

 

そのプレゼンの姿、プレゼン内容
どこかで見たこと、聴いたことがある

 

そう、真似しているのだ。その真似している相手は、テレビやネットによく出てくる大学の先生、評論家、シンクタンク、コンサルといった「専門家」「有識者」と呼ばれる人たちである。毎日のように登場し、滔々と専門用語を使って語る。なるほどなあ、そうか、すごいなあと学べる時はある。しかし

 

なにをいっているのかがわからん
ことが多い。

 

こちらが勉強不足なのか、自分が馬鹿なんじゃないかと思うこともあるが

 

それはちがう

 

その「専門家」「有識者」たちが間違っていることも多い。正しくないことを堂々と語っていることもある。

 

もうひとつある。その「専門家」「有識者」のなかには独り語りはできるが、対話が成りたたない人がいる。台本を読めても、台本にはない質問に答えられない人がいる。時として漢字の読みまちがえをする人もいる。つまり自らの力ではなく、誰かに依存している。知性が劣化している。

 

スマホ時代になって、スマホが主たる情報ソースとなった。すこぶる便利になった。簡単に手にした誰かの情報をさも自分の情報のように語る。本人・現地・現物・原書にあたらず、スマホを検索して誰かの情報を手に入れる。そしてそのスマホで検索したワードをつなげて語る。だから「句読点」のない文章のような脈絡のない語りとなる。なにを言いたいのかが分からない。

 

さらに、スマホのなかにまじる間違った情報を鵜呑みにして語る人もいる。「専門家」「有識者」には「発信」する機会が多く与えられたりするので、間違いが瞬く間に社会に拡散する。情報ソースを確かめもせず、当然それが「正しい」と考えて語るので、今までならばあり得なかったことがおこるようになった。

 

 

2.みんな、一緒のことを言う

 

とはいうものの、真似をすることは間違いではない。「守破離」が日本古来からつづく学びだった。能楽を確立した世阿弥をはじめ日本の芸の学びは「守破離」だった。師の型を見て、学び、その型をいったん自分のものにして、そのあと自分なりの工夫を加味して、新たな型をつくるという学びのステップは日本の方法論であった。だから真似から入ることは正しい。だとしたら、なぜおかしくなったのか。それは

 

問題は真似する師匠・先生の選択を

間違うようになったのだ

 

ビジネスもそう。商品やサービスには独創性が必要、オリジナリティが大切だといったりするが、現実はそんなものは最初からできるものではない。ビジネスの基本は真似である。上司・先輩を真似る、同僚を真似る。どこかで、だれかが、どこかの会社がしたことを真似る。過去に話題になったこと、売れたものを真似る。そこに、ちょっと独創性を加味して、すこし現代風にアレンジして、自分のモノ、自社のモノにする。それがビジネスである。しかし現実のビジネスがうまくいかなくなっているのは、真似する人・会社の選択が間違っているからだ。

 

ビジネスも芸事と同じく「守破離」である。ベンチマークとか横文字を使ったりするが、真似である。真似してはいけないという人もいるが、真似は基本中の基本。その真似したあとに類推(アナロジー)する。

 

あるモノ・コト・サービス〔A〕を観て、聴いて、学んで、それらを自らの知的基盤〔B〕に格納して、融合して、考えて考えて、類推して、新たなモノ・コト・サービス〔C〕を創造してきた。


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この知的基盤と類推力を活用したメカニズムが機能しなくなった。理由はふたつ。まず類推できなくなった、しなくなったこと。手にした、耳にした情報を何も考えずに、そのまま活用するようになった。正しいのか正しくないのか、本物か本物でないのかを峻別しないで、目立っているものだから、話題になっているものだからといって、そのままを受け入れて信じるようになった。ある面で、とてもストレートでプロセスとなった。

 

もうひとつは自ら考えて類推しようにも、自らの知的基盤が貧弱になってしまったこと。自らの経験・体験にもとづく知識と知見、社会のなかでの人と人の交流による知識・知見、過去の歴史を自らが読み、聴き、体験してつかみ、自らのなかに格納してきた知的基盤が薄くなっている。だから誰かが言ったことをそのままにスマホに出てきたものをそのままに信じるから、答えはみんな一緒になった。

 

 

3.見てわからない人には言うてもわからん

 

たとえば料理や芸・工芸の世界では

 

親方はやり方を教えなかった

 

親方は弟子を自分のそばに張りつかせて、やってみせた。見せて、学ばせた。

 

ああだ、こうだと口で説明するのではなく
自分がする姿を見せて、習得させた

 

親方がやった結果が素晴らしければ、弟子はその結果にどのようにしたら、自分はたどり着けるだろうかと粉骨砕身して、習得しようとした。

 

つまり親方は自分でやってみて、結果を出す。

 

結果こそ、すべてだった

 

その結果を観た人が、なぜその結果になるのだろうかと考え、そしてそれを習得したいと思い、動き出す。そしてその人の結果が出てはじめて、親方の「思想」が伝わったことになる。技や方法論だけではなく、思想を習得することが大事だった。学びの本質は、これである。旧海軍の山本五十六元師の有名な言葉


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は、まさに技術の継承ではなく、自分がする姿を見せて結果をだすためになにをしなければならないのかを考えさせるという「思想」の承継の教えだった。しかし現在の教え・学びは、技術論が中心。

 

こうじゃないの?
こうすればいいんじゃない?

 

という教えと学びが中心になった。それも、簡単に、時間をかけずに、短期集中で方法論を学びたいと考えるようになった。

 

ビジネスの世界もそう。企業の創業者は自らが動いて、結果を示して、会社を大きくした。

 

だからみんな、その姿を見て
ついていった

 

しかし事業継承者やサラリーマン社長は、自らはやらず、言うだけで、結果を示さない。

 

だからみんな、ついてこない

 

なぜか。ついていきたいと思う「姿」が見えない。だから「思想」が伝わらない。昔、こうもいっていた、見てわからんやつは、言うてもわからんと。

 

事実は結果

 

「それをした」「それをやりとげた」という事実こそが結果である。結果がないもの、結果が見えないことは、虚構にすぎない。親方・トップ・先輩が結果を残していく姿を見て、それを真似て、どうしてその結果を導けるのだろうと考え、自らの方法論を構築して、結果を残したとき

 

親方・トップ・先輩の「思想」が
つかめたということとなる

 

この学びがなくなった。効率化の名のもとで、ビジネスはマニュアル化が進み、IT化によるプロセスのブラックボックス化が進み、人と人の交流などビジネスで大切だった非効率、プロセスは無駄だと切り捨てられ、人から人への思想の承継が少なくなった。やり方は伝わっても「思想」が伝わらなくなった。これが結果が残せなくなった理由である。

 

さらにここからテレワーク・オンライン化・DX化・メタバース化が進む。生産性・効率性・利便性の向上が求められ対応していこうとする反面、人と人の交流がおざなりになっていくかもしれない。そうすると、さらに人のチカラがおちていくかもしれない。どうしたらいいのかは、次回考える。。

 


(エネルギー・文化研究所 顧問 池永 寛明)

〔note日経COMEMO 4月20日掲載分〕

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