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2022年02月09日 by 池永 寛明

【場会篇】mitene(みてね)が変えた家族の風景 ― ボクの居場所はどこ?(中)

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あの人、一人きりで死んでいたそうよ。近くの人が最近見ないので心配になって、管理人さんが部屋で発見されたって。私の知り合いも、誰にも知られずに死んでいたそう ― そんな「孤独死」の話を日常生活のなかでよく耳にするようになった。独身、単身、高齢、介護、認知症という言葉が、コロナ禍前以上に重くのしかかるようになっている。それらを原因とした事件も増えている。

20年前も30年前も、これからそういう時代になるのではないかといっていた。そうなるだろうからどうしたらいいのかを何度も議論していたのに、答えをだせなかった。そうなることがうっすら分かっていたのに、それに備えなかった、その対策をうたなかった。それが現実になって、私たちは現在どうしたらいいんだろうと言っている。私たちはずっとそんな繰り返しばかりしている。

 

 

1.mitene(みてね)がつくりだす幸せ

 

東京に住む孫が1歳となった。誕生から1歳までの孫の成長を大阪に住む私たちは同時進行で見ている。生まれた、お宮参りした、お食い初めした、ミルクを飲んだ、笑った、泣いた、初節句した、積み木で遊んだ、ベビーカーに乗った、ハイハイした、立ちあがった、一升餅でピアノを選んだ…東京の孫の成長の姿を「mitene(みてね)」という家族アルバムアプリでリアルタイムに見る。息子夫婦がスマホで撮ってアップした写真・動画をそれぞれのおじいちゃんおばあちゃん家族全員が見てコメントもできる。家族の誰がいつ見たのかもわかる。定期的に写真を編集してアルバムにしてくれ記憶が深められる。

 

mitene(みてね)のコンセプトとネーミングは、親子・家族の本質を捉えている。それは日本だけではない、世界共通の愛を育む。だからmiteneは日本から世界に広がる、便利になったというだけでない。家族の移動距離性を無くし、家族の関係性を深く強くしている。これは10年前20年前には絶対に味わえなかったこと。

 

LINEもそう。「最近、母乳が出にくい」と富山に住む娘からの悩みの相談に、大阪に住む母親が「私のときはこうだった。こうしたらどう」と親身に答えることができるようになった。昔だって、遠く離れていても電話で相談できたのじゃないという人もいるが、音声だけのやりとりと音声と文字と映像が加わったやりとりは全然ちがう。転宅したてで知り合いが少ない富山で、親とも兄弟とも友達とも、いつでもどこでもなんどでもトークでも音声通話でもビデオ通話もできる。LINEでのトーク・写真・絵文字・スタンプのやりとりも残せ、振り返ることもできる。

 

これも、単に機能的に便利になったというだけではない。子どもが親が友だちが自分のそばにいて、「一人じゃない」と思える時空間が突然でき、そしてそれがあたり前になった。年末年始・ゴールデンウィーク・お盆など滅多に会えなかった家族とずっといっしょにいているという世界に変わった。親と子・家族・友だち・会社の仲間の心と心をつなぎ、関係性を深め、強めつづけている。これも日本人の特性を捉えた、とても練られた仕組みである。

 

 

2.いつでもどこでもつながる

 

セブンアイ・ホールディングスが傘下の百貨店事業会社「そごう・西武」を売却する方向だという報道が流れた。テレビショッピング・オンラインショッピングが店舗売り上げを上回ろうとしている。「いつでもどこででも」購買したいモノが買えるという行動が、コロナ禍によって大きな本流になろうとしている。その動きがこの動きの背景にあることは明らかである。コロナ禍で、加速したということである。しかし、だ。そのようになるだろうということは、20年も30年も40年も前に言われていた。

 

テレワークもそう。こんな状況になっても、テレワークがまだまだ進まない。オミクロン株感染爆発でテレワーク化の必要性が叫ばれても、「テレワークではうまくいかない」「テレワークは難しい」といって出社する。しかし家族のなかでは、LINEのやりとりは普通に行っている。

 

なぜテレワークは進まないのか。パソコン・スマホが使えないから?オンライン会議では本当に伝えたいことが伝わらないから?機微が伝わらないから?テレワークでは人間関係をうまく築きあげることができないから?だからリモートワークはやっぱりできないという。世間体もあるから、ちょっとはしているふりをするけど、本気で進めない。しかし家族LINEで「いつでもどこでも」やりとりしている。本当はテレワークしたくない理由、出社したい理由は別にあるのではないだろうか。

 

子育てしやすい街ランキングの評価基準も変わろうとしている。「LINEで24時間相談」できる街が上位となった。生活者、子どもを持つ人々にとって、自分の親や友人以外に街に住む「専門家」に「いつでもどこでも」育児の相談ができるという行政サービスが評価されている。情報活用が子育てしやすい街ランキングを左右しはじめている。それは普通に考えたら、当たり前のこと。家族一人一人が「いつでもどこでも」つながるという家では当たり前となった事柄が、街では当たり前となっていなかったということ。

 

普通にできることを普通にしなかった。難しいとか、リスクがあるとか、まだ他所では導入していないとか、効果が出るのか分からないとか、予算がないとかいった理由を並べて、しなかった。生活者・市民が生活のなかで普通に行っていることを街が普通にしたらその街が住みたい街になるということは必然だった。普通にそうしたらいいということを、なぜ街は普通に考えてしないのだろうか。

 

 

3.つながっておわりではない

 

とはいうものの、SNSがすべてを解決するわけではない。SNSとはなにか。SNSの意味を少し考えてみる。

 

インターネットでつながる「SNS」はソーシャル・ネットワーク・システムのことである。S=ソーシャル(Society)であり、SNSでつながる関係は、相互扶助の関係を意味する「コミュニティ(Community)」ではなく、話しあったり声を掛けあったりする「ソーシャル(Society)」の関係である。

会社・職場は「Society」そのものであり、その関係性は指揮命令とチームワークである。SNSは「コミュニケーション」とかぶるので判りにくくしているが、SNSは社会性・関係性の観点から「ソーシャル(Society)」をつなぐネットワークである。それが本質であることをおさえておく必要がある。

 

SNSはたとえばLINEで大切な人とつながることができて、なにかあったら連絡をとりあうことができるようになった。簡単にだれかと、「いつでもどこでも」の関係になることができる。このようにSNSは場と時間の概念を大きく変える。しかしいつでもどこでも連絡がとりあえるSNSがあれば、それで十分というわけではない。

 

そのとき、なにかあったら、どうするのか

 

ということを事前に決めてセットしておかないといけない。もしもSNSでつながる遠くに住んでいて普通にやりとりしていた友だちが、実はお金がなく2日も3日も食べていないということが分かったとき

 

どうするのか

 

を決めておかないといけない。それがないと、問題は解決できない。

 

そんなことは滅多に経験することはないという人がいるかもしれないが、私たちはコロナ禍で、それを現在進行形で経験している。発熱して保健所に何度も何度も電話をかけてもなかなかつながらず、やっと電話がつうじて自分のつらい状況を伝えて聴いてもらっても、「また連絡します」と電話を切られ、翌日も翌々日も連絡がなく具合がさらに悪くなったケースもある。つまりそのとき「どうするのか」という対策を決めておかないと、たんに人と人がつながっているだけでは、物事は解決しない。これが、とても大切な論点。

 

どこか「SNSは万能」という世界観がある。相手の現状を知るという意味では、SNSは素晴らしい技術・ツールである。しかし

 

それを知ったうえで、どうするか

 

を事前に考えて仕組みを構築して準備しておかないと、状況を共有するだけではなにも問題解決しない、次に進めない。それは、コロナ禍の感染対策だけではない。ビジネス・生活・社会全般にいえることである。コロナ禍で状況をつかみ、じゃ現在、なにをどうするのかを考えて動き出すことが、次への展開につながっていく。

 


(エネルギー・文化研究所 顧問 池永 寛明)

〔note日経COMEMO 2月2日掲載分〕

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