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2022年01月06日 by 池永 寛明

【耕育篇】本格的に社会が変わる2022年 ― コロナ・オンライン社会(上)

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コロナ禍は3年目に入ったが、いつまでつづくのか ― この状態が10年つづくコロナ時代となる。1年目に掲げられた「withコロナ」はずっとつづくことになる。そのなかで、現在の私たちは感染症対策と併行して、コロナ禍のなかで社会がどうなっていくのかを見通すことが大事。

 

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技術は社会を変える。コロナ禍の本質は、オンライン技術が「人と人の関係性」を変えることにある。この構造変化は、人類史上誰も経験したことのない世界観をつくりあげていく。オンライン技術が社会に実装されることで、移動性、距離性という制約を外して世界同時性が実現することで、人生観・生活観・仕事観などの観念を変えていく。そしてこれら覚醒した価値観の実現に向け、オンラインなどの技術がさらに進化することで、ビジネスが変わり、社会が変わる。コロナ禍のなかをすすむ「オンライン」による社会とはなにかを3回にわたって考える。


 

1.なぜ迂回路も渋滞するようになったのか?

 

年末年始、交通渋滞に巻き込まれた。幹線道路だけでなく、迂回路も渋滞していた。混雑を回避しようと、迂回する。昔の渋滞の仕方ではない。カーナビとスマホナビ利用による渋滞である。とりわけスマホナビは便利で精度が高く、地元の人しか知らないような脇道を教えてくれる。スマホナビをつかうようになって、どんな道も混むようになった。どこもかしこも混み、八方ふさがりとなる。このスマホナビが生み出す新たな渋滞が現代社会を象徴しているのではないだろうか。

 

混雑は自動車で移動している人が多いという問題性があるのだが、近年の交通渋滞はそれだけではない。自動車を運転している人たちが

 

AIに無意識に支配されるようになった

 

ことで、新たな渋滞を生んだ。だからどんな道を選択しても、渋滞に巻き込まれることとなった。このように技術が社会社会・人々の行動様式を変えることがある。

 

AIもそうだが、オンライン・SNSによって情報へのアクセス性があがればあがるほど、

 

その情報を

「知っているか、知らないか」

に左右されることになる。

 

情報の内容よりも、その情報を相手が「知っているか」を確かめないと、安心できなくなった。だから、自分が知っていることをみんなも知っているかを確認するようになった。

 

ねえねえ、これ知っている?

 

ここから、会話が始まるようになった。これはきっかけにしか過ぎず、情報の交換にならない。その情報を知っているか知らないかで、相手を判断するようになった。このように「情報との向きあい方」が変わろうとしている。これが進んでいけば、人と人の関係が疎になる可能性がある。なにがおこっているのか。

 

 

2.無いも同じ

 

たとえばYoutubeには毎分500時間もの動画がアップロードされるという。別の言い方をしたら、1分間に全部観たら500時間かかる画像情報がYoutubeにあがるということ。TikTok、Twitter、Facebook、Instagram、LINE、Clubhouse、noteなどSNSによる情報が毎秒発信され、天文学的に増えつづける。

 

これら全部を観ることはできない。読むことはできない。切り口を変えていうと、毎秒毎分、世界中の人々がSNSから情報を発信する。情報は受信するだけのものではなくなった。情報発信は一部の人・組織だけのものから、誰もが情報発信者になることができるようになった。情報の受信と発信の情報構造が変わった。

 

もうひとつ大事なことがある。地球の全人口は約79億人。世界の79億人にはそれぞれ24時間があり、一個人が日々体験・経験していることと同じように、世界79億人にもそれぞれ24時間があり、それぞれが体験・経験している。それぞれの体験・経験での気づき・発想にもとづき、オンライン・SNSにて、世界の人々が情報発信するようになった。そして情報は氾濫する。それら世界の情報の殆どを、一個人は見ること聴くこと読むことができないので、情報は爆発し、

 

無いものと同じ

 

となる。このように一個人がアクセスできる情報量には限界がある。だから自分がアクセスでき、見ること聴くこと読むことができ、自分が知った情報以外の世界から発信された情報は

 

無いものと同じ

 

となる。だから人と人の関係において、その情報を「知っているか知らないか」が重要となった。

 

 

3.あるけど、無い

 

あなたが現在、私の文章を読んでいるこの時間に、カナダのエスキモーの恋人たちが▲20℃の凍てつくような公園で寄り添って語りあっているかもしれない、中央アフリカのレンジャーたちがジャングルのなかで象を守っているかもしれない、イタリアの家族がミラノの大聖堂に向かって歩いているかもしれない。世界の79億人には79億人の時間があるが、そのすべてを知りえない。それはあるけど、無い。

 

小惑星リュウグウに、「はやぶさ2」が行って帰ってきた。52億4000万?という移動距離を飛んだ。遠く離れている惑星に、はやぶさ2がたどり着き、惑星の粒子をとって、地球に持ち帰った。この画期的な天文学的快挙の意味とは別に、もうひとつ重要な意味がある。地球からとんでもなく離れた今まで見たことも聞いたこともなかった惑星にも

 

「同じ時間」が流れている

 

ことを知ったということである。

私たちは夜空に星を見ても、その星に「時間が流れている」ことなど意識はしない。しかし1302日もかけて飛びつづけないといけない遠い場所にたどりつき、その小惑星の砂の粒子を採取し、地球に帰ってきた。その情報に接すると、その星に現実味が帯びてくる。そして大地の下に埋もれていた砂が分析され、昨日今日にできたのではなく何百年も前からつくられたものだったことを知ることで、宇宙に地球と同じ時間を刻んでいる小さな星があることで、世界観が大きく変わる。

しかし「はやぶさ2」が小惑星の砂を持ち帰り、その実物を見るという機会がうみだされなければ、

 

無いものと同じ

 

だったのである。地球からいちばん近い衛星である月でさえも、地球から月の裏側は見えない。自分の目で見ない限り、月の裏の世界は

 

無いものと同じ

あるけど無い

 

存在だった。それが人類はその月の裏に飛び、そこを見ることができる時代となろうとしている。現在を生きる私たちが「情報」と向き合ううえで、重要な技術による社会変化がおこりつつある。

 

 

4.人類史上初の世界観となる

 

今まで自ら行かなければならなかった「そこ」にある事柄がデジタル化され、いろいろな人々から情報発信され、その情報を見たり聴いたり読もうと思えば見聴き読むことができる世界は

 

人類史上初めてのとても深く広い次元

 

に私たちは立とうとしている。距離を越え、時空を超え、


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ということを知る世界観になりつつある。そこには、一人一人の日々の普通と同じ普通があることを知る。また一人一人の「特別」と同じ「特別」があることを知る。そういうことがあるということを知るということは、人類が今までできなかったことである。これまでの人類にとって

 

時空や距離が離れている所での事柄は

無いのと同じだった。

 

「地球は丸い」ということを知らない時代は、地球は平面であり、陸地をずっと行くと、どこかで陸地が終わり、そこから先は無いという世界観だった。「地の果て」という言葉があるように、地球には「果て」があって、そこから先は無いと思っていた。そこに、コロンブスが航海して、それまでの世界観を覆し、世界は「地球は丸い」ということを知り、

 

ぐるっとまわって

出発点にもどってこれる

 

ということを実際の航海で立証した。

 

人類の世界観は、実際に見聞き読み知らない限り、「無い」も同じだった。その世界観が平成時代の初めから変わりつつあったが、コロナ禍リセットを契機に本格化したオンライン技術が、人のあり方、人と人の関係性、社会の構造を大きく変えようとしている。リアルかバーチャルではなく、リアルとバーチャルを融合した「新たなリアル」がうみだされようとしている。

 

これから、これまで人類が経験したことのない世界観から新たな物事がうまれていく。ここから社会は大きく変わる。これからどう変わり、どうしていくかは次回・次々回に考える。



(エネルギー・文化研究所 顧問 池永 寛明)

〔note日経COMEMO 1月5日掲載分〕

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