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2020年12月25日 by 池永 寛明

【交流篇】それじゃ、どないしたらええねん?ー コロナ禍、これからどうなる(7)(終)



偽物はコロナで炙り出され消えていくはずだが、いつまでも本物・真物に変わらず、偽物が残っている。コロナ禍の日本の悲劇は、ここにもある…。高校野球の地方予選で、先発予定の投手が出場できなくなり、補欠選手が急遽マウンドに上がり打ちこまれ2点の失点でしのいだものの、2回も打たれて3点とられた。3回と4回は頑張って0点におさえたが、5回に打ちこまれて4点とられ、なおも満塁。あと1点で、コールド負けする。どう踏んばるか、どうする、それが現在。


1.コロナ禍で浮彫りとなった日本の産業構造の課題

「感染者が発生した → 落ち着いた → また発生した → 落ち着いた → またまた発生した」― この繰り返し。収束は終息ではない。ぶり返し繰りかえしが無くなるまで、終息しない。もはや「頑張ろう」とは誰も言わなくなり、アマビエさえ話題にならなくなり、医療崩壊が叫ばれ、東大寺の修二会さえ奈良時代以来の中止すら検討されている。

行くところまで行くんやろか
コロナ禍のはじまりからずっと、同じことが同じ人たちから発せられ、コロナ慣れ。戦力の逐次投入がつづきコロナ疲れしていたころに、感染爆発。八方ふさがりとなって思考が停止。どないしたらええんや。新型コロナウィルス関連が連日のようにトップニュースとして流れ、2020年が終わろうとする。やっぱりコロナ禍は2020年で終わらんかったなぁ、2021年もコロナ禍が続くことが決定的やなぁ、ほんまにどうなっていくんやろ…。


コロナ禍が、社会にどんな影響を与えているか
なにがどうなっていくんやろか、ようわからん。コロナ禍が収束した後、社会はどうなっているんやろか。コロナ対策も大事やけど経済も大事。しかしその「経済」はGoToトラベルやGoToイートだけやない。それは目に見える問題解決であって、真の課題解決になっていない。今はいいけど、1年後2年後3年後の日本のために経済をどないしていけばいいのかが聴こえてこない。


日本は「サービス産業」の国になっていた。
ものづくりの日本というが、日本はすでにサービス中心の国となっている。その日本がコロナ禍で世界との交易・物流が減って、ダメージを受けている。国内でつくったモノを世界に輸出することができなくなり、世界から金を持ってくる力が弱まっている。サービス中心に経済がまわればまわるほど、国内から金が消えてしまう。どうしたらいいのか。サービス中心となった産業構造の日本が生きていくためには、新たな市場で新たなモノ・コト・サービスで、世界から金を持ってこなければいけない。世界との交流・物流が減っているコロナ禍でそれが明確になっている。


サービスの本質は「同時消費性」
サービスは、それを見たらおわり、それを食べたらおわり、それを楽しんだらおわりである。一方、工作機械は買ったら10年20年30年つかえる。日本は「ものを売るもの」を産業と考え、日本の産業の軸足は「耐久財」と考えつづけてきた。住宅産業とか家電産業とか自動車産業が、日本の主たる産業と考える。

モノづくり神話が今も「日本」を支配しており、サービスは「同時消費性」だから、日本の主たる産業としていかがなものかと考える雰囲気が流れている。Made in JAPANで耐久財として残るものが日本の産業で、それ以外は産業と見做さない。飲んだり食べたりコンサートに行ったり絵を観に行ったりスポーツをしたりすることは、消費したら消えるという「同時消費性」だから、周辺消費だと色物扱いしたり下に見たりする。


図1


コロナ禍で、”これからオンラインだデジタルだ”というが、それを使ってなにをするのかが見えていない。なにとは「サービス」のことだが、日本はサービスに重きを置かない。日本はこれまでITなどの技術で何ができるのかばかりを考え、人々が欲しいこと、人々がしたいことがわからなくなった。

今、私たちが追いかけるべきことは、コロナ禍・オンライン化による「場」と「時間」の変化によって変化していく社会的価値観が求めるコト・モノ・サービスとはなにかであるが、その姿・形が今の日本は見えていない。

2.世界が評価する日本の強み「日本の文化性」

「ワクチンができたら、中国のハイエンドのお客さまを日本にお連れします」と日経フォーラムで話されたのはTrip.comグループCEOの孫潔氏。コロナ禍収束後、中国のみならず世界から日本を訪れるトラベルバブルがおこるだろうと彼女は言った。日本で美しいモノを観たい、素敵なモノを感じたい・触れたい、美味しいモノを食べたい、日本的なコトを体験したいという世界の人々が日本に来られるという。コロナ禍で大きく変わる社会的価値観の、オンラインで世界とつながったコロナ禍後、旅のカタチも働き方も根本的に変わる。

では、なぜ日本なのか。

中国人に聴いた。日本人は漢字を使う。中学校・高校で漢文を習う。中華料理が好き。唐招提寺もある。華道・茶道・書道もある。唐の都長安をイメージした奈良・京都もある。中国人にとって日本は「ユートピア」だという人もいる。「昔の中国」を日本に観るだけでない。中国に先行して西欧化した日本は、幾多の努力をして現代の日本をつくりあげた。その「現在の日本」に学びたいという。

中国人は日本の文明度の高さを知っている。ビジネスも、科学技術も、文化もすごい。日本人がつくるスペックはハイスペック。どうしてこんなにレベルが高いのだろう、どんなに文明度が高いのだろうと、日本を見ている。当の日本人はそう思っていないが、世界はそう思っている。ここに、これからの日本の論点がある。


外国人が志向しているのは、日本の文明性
土地を耕して種をまき水をまき、肥料・養分を与え、手入れをして収穫、そしてまた耕して…創意工夫して繰り返して素晴らしいものをつくり、次につないで、くり返しながら洗練していくのが文明である。


カルチベイテッド


たとえばコンビニ。昔のコンビニは日常品に雑貨が中心だった。日本人は気づいていないが、そのコンビニが驚くほど進化している。中国人は日本の現在のコンビニを見ると、「中国は30〜40年おくれている」と感じるほどである。

マンガにしろアニメにしろ、ゲームにしろ、観光、もてなしにしろ、外国人は日本の「文明性」を消費している。日本は新たなモノ異なるモノもブラッシュアップして洗練してきた。アメリカから入ってきたセブンイレブンを、マクドナルドを日本的感性で洗練させた。ユニクロもそう、欧米発のカジュアルファッションを日本的に解釈・翻訳して磨きあげ、世界に広げている。外国由来のものをより洗練したものに仕上げるのが日本の文明力である。


150年前、日本は「日本」を流出させた。幕末・明治維新に、北斎・広重の浮世絵などの日本文化がヨーロッパに流出した。日本人は自分たちの本質・価値に気づかず、多くの日本を喪失した。
現在でも、それがおこっている。日本のブランドイチゴがそう、海外にノウハウを流出させてしまった。日本人は大切なこと、すごいことはなにかを認識していないので、「日本」を流出させてしまう

エンターテインメントも、韓国が席巻している。韓国のガールズバンドは日本式。韓国のエンタメ産業の最大ターゲットは世界最大である日本市場。日本の女の子がカワイイと応援している。日本からファションや演出など文化のコードを取り込み、歌を磨きダンスを洗練させた独創的なエンタメとしてプロデュースしているから、世界に評価されて当然。

日本人がつくったコスプレ、コスチュームは殆んど中国企業が支配している。コスプレの多くは日本のマンガやアニメやゲームが素材なのに、中国企業が世界展開している。なぜか?日本はこれらを色物扱い、主たる産業として見做していなかったからである。

 

3.コロナ禍後の日本再起動への道

日本産業の中心といわれた電器産業も自動車産業も、かつてのように世界から金を持ってこれなくなった。外から金をもってこれなくなると、国内だけで金をまわしてばかりいると、サービス産業はメシが食えなくなる。


金がなくなる図3


日本の産業は、「1次産業が5%、2次産業が26%、3次産業が68%」と3次産業が日本の産業の圧倒的となっていることに気づいているが、その産業構造の意味を認識していない。サービス産業が国内だけで金をまわしていると、金がなくなる。外からもってくる金を持続的に拡大していく仕組みを構築しないと、日本は行きづまってしまう。それを予測するようにコロナ禍の移動制約は、日本のサービス産業に大きな影響を与えている。

ではどうしたらいい。日本の最大な強みである日本の文化・文明「コンテンツ」産業を世界展開するという方向性がある。そのコンテンツは、マンガ、アニメ、映画、小説、ゲーム、観光、もてなし・スポーツ産業だけではない。

たとえば「日本」料理もコンテンツ産業。日本料理とは和食だけではない。日本で食べる料理は、カレーもスパゲティも「日本」料理。日本人の「感性」というフィルターが入った「日本」料理は、世界に通用する日本文化・文明コンテンツ産業である。

老舗の高級寿司屋は日本の食文化だが、回転寿司もコンビニ寿司も日本の食文化である。回転寿司やコンビニ寿司は寿司でないという考えは日本の食文化を細らせる。レベルの高い日本料理店も大切であるが、毎日食べる料理も大切である。カジュアルな料理店がレベルアップすることで、レベルの高い料理店が尖って日本食文化全体が豊かになる。


画像2


つまりそれぞれの分野の基盤が厚くなればなるほど、すごいものがあらわれる。にもかかわらず日本は基盤をないがしろにしてきた。上から目線で下に見たり軽く見たりして、全体を薄くしてきた。100の基盤がトップ「1」を生む。トップ「1」の本質を理解して、基盤の99を磨きあげて、厚くしなければいけないが、コロナ禍でその基盤をさらに弱めている。

コロナ禍は大断層(リセット)・未来への岐路
これまでの延長線では機能不全に陥らせ、基盤を脆弱にする。コロナ禍のこれまでは「激変緩和」期で、これから半年間に本当のコロナ禍後の姿に襲われる。これから2021年の半年間が正念場となる。どないなっているのや、どうなるんやと思考停止している場合ではない。


これまでのビジネス発想で新たな技術がうまれるかもしれない。しかしそれは限られた社会の一断面・部分最適で終わってしまう可能性が大きい。それは、コロナ禍後社会に受け入れられなくなるかもしれない。

どうしたらいいのか。技術・製品がなにをうみだせるのかと考えるのではなく、コロナ禍後の社会観・市場観を展望し、コロナ禍後のライフスタイル・ビジネススタイルを想像し、それらを実現するため、どういうモノ・コト・サービスが必要かと考えて創造する。大きく変化していく社会・生活・仕事像を想定して、自らの事業を「再定義」する。

コロナ禍後は、大量生産・大量消費、マスという「象」の時代ではなくなる。既存の社会観にもとづくビジネスシステムだけでは、日本は食べていけなくなる。「IT×AI×ビジネス=DX」がコロナ禍後社会を救うのではない。
これから日本が成長していくために、DXをつかって日本文化・文明コンテンツでGDPの40%を稼ぎだすのだというくらいの市場観・未来観で、マンガ・アニメ・小説・映画・ゲーム・アート・観光・もてなし・スポーツ・衣食住など日本文化・文明コンテンツのサービス産業で日本を掬(すく)っていくことが必要ではないだろうか。

コロナ禍の現在、人々はどうありたいか、なにを求めていくのかを想像し、そのありたい姿を、全集中の呼吸で創造し、日本を再起動する。そう考えたら、2021年はワクワクする。その姿を考えていくため、これから2週間、積極的冬眠に入る。


(エネルギー・文化研究所 顧問 池永 寛明)


〔日経新聞社COMEMO 12月25日掲載分〕