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2020年08月26日 by 池永 寛明

【起動篇】「まだ大丈夫。なんとかなる」と考えたい空気が流れている


“まだ大丈夫。うちとこは、なんとかなる。”
緊急事態宣言が解除されても、お客さまは帰ってこない。ソーシャルディスタンス対応でいろいろな場所の制約があるが、大丈夫、お客さまは必ず来てくれる。工場の稼働は2分の1、大丈夫、今までもうまくいった。来店客は3分の1だが、なんとかなる、イベントやキャンペーンをうったら、元に戻る。前期はオンライン講義、後期はなんとか大学の教室で対面講義したい、そうでないと来年の受験に影響する。インバウンドは当面無理だが、私のところは国内旅行客が中心だったから、落ち着いたら来てくれるはず、きっとなんとかなる…。実質的にコロナ禍に入った3月から、半年が経った。現況は厳しく、これからのことが予想できないが、「まだ大丈夫。なんとかなる」という空気が所々で流れている、なぜか。


サービスの現場は厳しい。
ある都心の飲食街では、2割の店がすでに閉じた。秋冬にかけて、さらに増えるという。それも突然の閉店が多い。経営者が行方不明となるケースもある。コロナ禍が心配、不安。「コロナ禍はこれからどうなるのか、いつまでつづくのか」「お客さまはいままでのように来てくれるのだろうか」「これから補助金が無くなったら、家賃と人件費は払えるのだろうか」「弁当や仕出しなど新しい分野に取り組んだが、やはり今までのやり方で頑張る。」「当面しんどいが、まだ大丈夫、なんとかなる」という声がでる。


今までどおりいくとは思えない。
多くの会社でテレワークが普通となって都心に通勤する人々が少なくなり、「ちょっと一杯」「親睦会」が減り、「接待」をしないできない状況がつづいている。それは3日とか1週間といった実験的トライアルではなく、1ヶ月2ヶ月3ヶ月半年つづき、それで普通となった。今までとちがう飲食スタイルとなったことは明らかであるのに、いままでどおりにお店が戻るとは思えない。


しかしこんな状況でも、厳しい業種のなかでも、売り上げをのばしている企業・店・人がいる。苦戦している企業・店ばかりではない。二極化・三極化どころではない。各社・各店バラバラになろうとする。今までのように、同じ方向に進んでいくという展開シナリオは描けない。なぜか。コロナ禍前とコロナ禍以降の前提条件が変わった。
各企業・各店舗・各人ごとに、状況はちがう。“コロナ禍前に、なにを考え、なにをしていたのか”と、“コロナ禍に入って、なにを考え、なにをしてきたのか”によって、それぞれの現在とこれからはちがってくる。にもかかわらず、“みんなと同じ”と考えようとする、そして“なんとかなる”と考えようとする。


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“コロナ禍で大きく変わらない”
という「先生」たちがいる。「コロナ禍といっても、大きくは変わらない。元に戻るよ」と語る「有識者」と呼ばれる大学教授や評論家が多い。彼らの言説は対症療法、その場対応の方法論や一般論が多く、参考にならない。「過去」に生きる先生方にとって、コロナ禍にあてはめる「過去」が見当たらず、機能不全をおこしている。
みんな同じことをいう。テレビやオンライン講義で社会的不安をあおることを避けようとしているのかもしれないが、市場・社会の現場に立っていない先生たちは「現在」がどのように成り立ち、構造が変化していこうとしているのかというメカニズムをつかめないので、人の心を打つことを語れない。


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社会観・市場観・生活観がずれている。
「観」はその人・その組織がそれまで取り組んできた事柄や試行錯誤によってつくられる。現在は過去に埋めこまれている。自分・自組織だけ見て、他人・他組織・市場を見ていないと、全体が見えてこない。内と外の過去から現在の流れを見つめ、「変化」を読み解かないと、未来は見えない。
いつからか、日本は全体がどうなっているのか、過去から現在の時間軸でどうなったのかをつかみ、なにをすべきかを考えないようになった。


虫の目で自分・自組織の現在を見てばかりいては、未来は見えない。市場全体の現在がなぜそうなったのかという構造と関係性をつかまないと、未来は見えない。鳥の目で見れなくなった日本人。部分ばかり見て、全体が見えなくなった。「鳥」と「魚」の目で、市場全体を俯瞰して過去から現在の流れと構造をつかまないと、未来が拓けない。あきらかにコロナ禍前からコロナ禍に大断層(リセット)がおこっている。にもかかわらず今までどおりで、「なんとかなる」わけがない。



コロナ禍期の現在、なにをどう考えるのか、どう準備するのかで、コロナ禍後の姿は大きく変わる。


(エネルギー・文化研究所 顧問 池永 寛明)


〔日経新聞社COMEMO 8月26日掲載分〕

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