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2018年04月28日 by 池永 寛明

【時間篇】 自分たちの「未来」を選んだ子どもたち

    


「昆布とカツオをスープに使い、UMAMIを出している」

次々と料理が木のお盆にのってはこばれ、盆栽のような料理の見せ方などは日本料理をイメージさせるが、決して表面的に日本料理の“形”を真似ているのではない。幾重もの素材を重ねあわせ、それぞれのよさをひき出すため昆布とカツオからとった出汁でつなぐという日本料理のベースをとり入れている。


伝説の店「ノーマ」の系譜を継ぐコペンハーゲンのシェフは、“フレンチ×ノルディック”の独創的な北欧料理で味の新潮流をおこして人気の店だが、日本料理の“本質”を掘りおこし掛け合わせている。


そのコペンハーゲンで、「Learning from Japan(日本から学ぶ)」展が当初予定を延長して開催されている。展示会場の北欧人たちの数と、時間をかけて見入っている姿に驚かされる。

あのロイヤルコペンハーゲンが古伊万里や有田焼から影響をうけたというのは有名だが、「デザイン ミュージアム デンマーク」での展示から、今まで知らなかった"日本"の姿が見えてくる。


デンマークが日本に学ぶのは、1867年のパリ万博を契機とした「ジャポニズム」ブームがおこった幕末や明治という時期にとどまらない。北斎や広重や歌麿だけではない。大正、昭和、現代にいたる長い時間軸で、美術・工芸のみならず、ファッション、建築、照明、家具、住文化など広範囲に日本の文化・デザイン・センスが怒涛のごとく伝わり、多様なフィールドで浸透し、「デンマークデザイン」が形成されていくプロセスが、分野ごとに両国の作品を並べた展示で理解できる。

日本人がデンマークやオランダなど北欧デザインに親近感を覚えるのは、日本文化の“DNA”であり“面影”を感じるからかもしれない。しかし日本がデンマークに影響を与えるとともに、デンマークから日本が学んだことも多かったはずである。文化とは相互交流・融合である。


「市松模様の伝統×近未来」を融合させた2020年東京五輪・パラリンピックのマスコットが選定された。「それぞれのマスコットが日本の文化や歴史的背景を盛り込んでおり、子どもたちは投票の過程で多くのことを学んだのではないか」との武蔵野学院大のジェフリー・トランブリー准教授のコメントが、世界の人が感じ、見る、“日本”を象徴している。


その“日本”とは、コペンハーゲンの「日本から学ぶ」展での日本文化であり、近年のインバウンドで世界からの観光客が感動する日本の建築空間をはじめとする文化などに織り込まれた「ミニマリズム」であり、それを“日本”として世界は捉えている。その“日本”に気づいていないのは、もしかすると、私たち大人の日本人ではないかと感じることがある。

過去と近未来を融合させたマスコットを選んだのは、小学生たち。通常、国や地方の政策や計画やなにかを決めるのは、大人たち。それも、その分野の専門家というのが普通だが、今回その決定プロセスに子どもたちが選ばれたのは画期的である。


「フューチャー・デザイン」や「フューチャー・センター」が多くの国で、次々とつくられている。未来を考え、バックキャスティングして、行動しようとしている。若者・中高年・高齢者から子ども、男性も女性も、多国籍、多文化など多様的なメンバーが集まり、未来に向けたアイデアを出しあい、まとめていくというプロセス、“対話”していくという活動がはじまっている。


未来は、今の子どもたちが主役。今回の東京オリンピック・パラリンピックのマスコット選定のプロセスはすごい。自分たちの未来を子どもたちが選ぶ。子どもたちが選んだのが、自らの国が過去からつないできた“文化の本質”と未来とを掛け合わせる「方法論」を選んだことに、日本の未来の可能性を感じた。日本の子どもたち、すごいじゃないか。


エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)


日経新聞社COMEMO  38日掲載分


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