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2017年05月11日 by 池永 寛明

【耕育篇】 上方文化を酒田に伝えた方法

     

 

山形県の酒田を歩いていると、まちのたたずまい、通りや店舗の雰囲気、住居内のしつらえ、人々の話し方に、「上方」を感じることがある。井原西鶴が「日本永代蔵」で、「西の堺、東の酒田」と並び称したが、江戸時代から明治にかけて酒田湊は賑わっていた

北前船による日本海から瀬戸内海の西廻りの海上輸送の上り荷と下り荷にて、北海道・東北の海産物などを各湊に寄港して商いをしつつ最終上方に、酒田へは京・大坂の木綿・油・塩などや雛人形や絵画、茶、陶器など上方文化が持ち込まれた。日本海側の湊の町々でどこか感じる上方文化のにおいは北前船(北海道・東北⇔日本海岸⇔瀬戸内海大坂)がもたらしたものだろうと思っていた。

 

大阪天神端6丁目にある「大阪くらしの今昔館」に入ると、驚く。熱気がすごい。天神橋商店街を歩く外国人が「大阪くらしの今昔館」に吸い寄せられていくと感じるほど大阪の観光のメッカになっている。52万人の年間来館者の2人に1人が外国からのゲスト。館内は多言語・多様性につつまれる。外国からの来館者が着物を着て、江戸時代の大坂道修町を再現した町を歩かれている。建物だけでなく、釘の一本、雨どいのしずく、道具、物干しなど限りなく精緻に再現された200年前の「大坂」と明治・大正・昭和の「大阪」が体験できる。

 

昔の大坂の建物・まち・暮らしを再現するだけでなく、ボランティアが町衆となって館内のいたるところで「大阪流」のフレンドリーさで外国からのゲストに声をかけ江戸の大阪の暮らしを語っている。そして館内で撮影した写真とボランティアとの会話がSNSですぐさま発信される。ボランティアとSNSが大阪くらしの今昔館の成功の要因といえる。

 

着物体験するお客さまがエキストラになっていただくことを含めて、劇場型ミュージアムを目指している」と、大坂くらしの今昔館の谷館長。これまでの美術館や博物館の概念を超えた参加型ミュージアム。小学生たちが昔の大坂の暮らしの勉強に来られる姿も見うけるが、外国からのゲストが圧倒的である。館内を歩く姿は決して物見遊山に来られるのではなく、「大坂の高度な生活文化」を学ぼうとされている。外国方は「なぜ大坂が天下の台所となったのか?」「なぜこのようなスマートなまち・住まいをつくることができたのか?」という「大坂の本質」を発見しようとされている。江戸から明治・大正・昭和にかけてのまちと住まい、暮らし、生活文化を感じる歴史の宝庫だ

 

その宝の山のひとつをご紹介したい。造り物」が大坂の町屋に並べられている。江戸時代の大坂の船場の祭りにおいて、獅子、にわとり、布袋、牛若丸などの造りものを通りや町屋の座敷に飾られていた。それは小さな造作ではなく、座敷いっぱいに置かれるほど巨大なものだ。そして毎年、決まったものを置くのではなく、大坂の町屋の人たちがユーモア精神を発揮、創意工夫して人目を驚かせる飾り物をつくり、周りの人たちだけでなく、自分自身が祭りを楽しもうとされていた。それにしても実に高度な芸術作品で、江戸の大坂の文化レベルの高さに驚かせる。

 

ここで注目するのはその精巧で巨大な飾り物をつくるマニュアル本が存在していたということ。「造物趣向種(つくりものしゅこうたね)」という造り物をつくるためのアイデア集が種本として出版されていた。おそらく小物の雛人形などの現物は北前船などにのって各地に運ばれたのだろうが、種本という形で、大坂・京都の文化のつくり方が酒田など全国各地に持ち込まれたのではないだろうか。上方から日本海、全国へという文化の伝播は、このような種本のビジネスシステムなどによって、上方文化が広まっていったのではないだろうか。

 

(エネルギー文化研究所所長 池永寛明

 

〔CELフェイスブック 68掲載分改

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