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2017年04月21日 by 池永 寛明

【場会篇】 都市景観の史層を歩く

      

 

昨年NHKで「あさが来た」が放映された。

江戸時代の大坂から明治の大阪への移行を鮮やかに、透明感あふれる明るさで描写された「あさが来た」で交わされる大阪弁が素晴らしかった。しかし、いま大阪で多く使われている大阪弁と立居振舞いとのギャップが大きいという声があった。いや、あの言葉やまちの風景は、大阪ではない、京都ではないのかという声もあった。

 

それは、違うあさたちが話していた言葉は、大坂船場の言葉そのもの。そもそも江戸時代の大坂弁は、日本語の原型といわれている。江戸時代の前半、大坂は元禄町人文化を開花させていく土壌と社会環境のもと、今の大阪弁へと繋がる大阪言葉の原型が生まれた。近松門左衛門の「曾根崎心中」の台詞がまさにそれで、江戸時代の大坂は全国の産地と商業・交易ネットワークが構築された天下の台所であり、大坂弁が全国から標準として指向されていた。このように都市・地域には「記憶」がある

 

その都市・地域の記憶を探すため、まち歩きをする人を多く見かける。ブラタモリの影響もあるだろう。地図を片手に、古い建物、歴史的建造物、石碑を見ながら、スマホで撮りながら、まちを歩く人が増えている。週末のみならず平日も中之島や船場をまちあるきをしている方が多い。ビジネスマンとともに私服のシニアが歩く姿をよく見うけるようになった。まちの今を歩きながら、まちの過去と記憶を掘り起こしている。まさに過去と現在を行き来している。

 

社会歴史地理学で有名な立命館大学文学部の加藤政洋教授から「都市景観の史層」という言葉をお聴きした。「現在目の当たりにしている都市は、過去の建造物の選別的な除去、建造環境の創造的な破壊によってつくりだされた所産であり、つねに現前する新しい景観の背後には、消えたあるいは消去・除去された累々と重なる過去の景観の層がある。それは都市景観の史層と言い換えることができる」と

 

大阪船場には時間幅が混在している。江戸時代の建物の隣りに平成の建物が建つ。明治の建物の横に、昭和の建物が。時間幅が広く混じりあっている。また都市の中心部を川が流れ、「人工と自然」が混じっている。そして大阪は秀吉以来の通り<東西の軸>は同業・業種が集められたため(たとえば道修町通は薬種店がたち並ぶ)、通りごとの「匂い」がちがうまちには史層がある。

 

都市景観の史層を思い浮かべながら歩くということ、過去にその街に生きた人たちと会話しながら歩くということ。

 

エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明

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