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2017年04月06日 by 池永 寛明

【耕育篇】 世界遺産をつくった大工棟梁の仕事

   

 

特別展 中井大和守の建築指図 世界遺産をつくった大工棟梁 を大阪くらしの今昔館で見た。

大坂城、江戸城、二条城、名古屋城、京都御所、清水寺、知恩院、北野天満宮、方広寺など名だたる江戸時代の名建築物の建築指図が展示室に広げられていた。世界遺産をつくった大工棟梁、江戸時代の幕府の京都大工頭の中井家の仕事の流儀は、今のビジネスにも通じる。

 

戦国時代から織田・豊臣時代をへて江戸時代に入り空前の建築物の築造ブームが起こった。それまでの職人的な大工では対応できなくなり、新たな時代に新たな才能、ビジネスモデルが必要とされた。多数の職人を組織化し、大規模な建築工事(当時の言葉で「作事」)を遂行する建築経営能力求められ、大和の国で法隆寺の4大工であった中井家が、徳川家康より「京都大工頭」を仰せつかり、内裏、伏見城、大坂城、江戸城、名古屋城をはじめ、幕府負担による寺社、公儀橋の新造・修復工事を任された。まさに「スーパーゼネコン」だった。そして、中井家が建造した建物は400年後「世界遺産」となり、「世界遺産をつくった大工棟梁」という称号が誰よりも相応しい。

 

江戸幕府の京都大工頭の中井家の仕事の流儀は今のビジネスにも通じる

 

  類い稀なプレゼンターであった。
建築指図(設計平面図)に、いまでいう子ども向けの飛び出す絵本のような「起こし絵図」でリアルに伝わる仕掛けや、建地割という立体的な模型(吉田社)に、現代のプレゼン技法のようなインパクトを感じた

 

  ビジネスモデルデザイナーであった。
江戸に入り、禁裏、城や寺社・お茶室などの建設ラッシュで、納期が厳しいなか、一連のバリューチェーンを分解し建築プロセスを測量、設計、土木、建築、維持・修理に分けそれぞれを一体につなぐマネジメントをおこなうというビジネスシステムを編み出した。そのうえで「京都大工頭」として畿内、近江の大工等職人を集めプロジェクト編成、それぞれの強み弱みを掴み、役割分担を行い分業体制を敷き、人材育成を行い、職人を組織化し施工管理を行なう建築工学・経営を行った。このビジネスシステム400年前に行っていたのだ。

 

次につなぐエディターであった。
中井家は禁裏・城・寺社・茶室という機密性の高い資料や記録を保存していた。神社や庭の構内配置図は美術作品のように見えるが、美を訴求するものではなく、建物、庭園の建物や木・石などを次の仕事、後世に繋げるため、大工の棟梁目線で描かれた記録・保存資料である。なかでも天皇の儀式・祭祀などの起こし絵図が残っているが、まさに日本文化・伝統継承を編集したプラットフォーム。

 

現代の視点で江戸時代の中井家の建築指図を見て、学ぶことが多かった。

当然ながら、この建築指図は江戸時代においては関係者以外秘匿資料であり、誰の目にも触れなかった情報だ。さらに江戸時代多かった火事を乗り越え現在にこの貴重な資料が残ったのは中井家の蔵が守ったのだという。

 

(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明

 

〔CELフェイスブック 82日掲載分

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