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2017年03月23日 by 池永 寛明

【能源篇】 「囲炉裏端のある風景」に学ぶ

     

 

北海道ではおそらく寒かっただろう。明治41871)年に旧徳島藩家老に従って,淡路島から静内郡に移住し商売に成功した武岡家の住宅(店舗兼住宅)を見た。まるで江戸時代の西日本の武家屋敷をイメージしたかのような庭と和室、囲炉裏のある板間がある。故郷の淡路島を思っての建物だったのかもしれないが、厳冬の北海道の住まいとしては厳しかっただろう。

 

札幌から近い「北海道開拓の村」。明治維新後、日本中から北海道開拓にあたった人たちの建物、建造物が移築復元、再現されている。馬車のひづめの音がこだまするなか、圧倒的な空間に52棟の建物が並び、北海道開拓、建設の労苦、当時の北海道の人たちの生活の息づかいを感じさせるリアルな場であった。

 

さらに、北海道博物館で、アイヌの家「チセ」を見た。葦で組みあげたストローハウスのような家。家の中央に炉がつくられ、家の主、家族、客人の座る場所が決められている。また寝る場所、宝物や儀式の道具をおく場所がきちんと決められている。

 

炉はつねに火種をたやさないようにしており、火を焚き熱が上昇すると冷たい風が入り込んで、「チセ」内の温度を20℃にコントロールするような工夫がされている。また壁や屋根のヨシなどが断熱材となり、北海道の寒い冬をしのぐことができたという。北海道の四季とともに暮らしてきたアイヌの人々の素晴らしい知恵に、今こそ学ぶべきではないだろうか。

 

自然環境と囲炉裏と建物とがうまく組み合わされた「エネルギーの原点のかたち」をアイヌの建物「チセ」で教えられた。この囲炉裏端は、暖をとり、食事をとる場だけではない。家族みんなが顔を寄せ、つぐつ煮立てた鍋をつっつき食べる。もちろんテレビはない。子どもたちとお母さんが今日あったことを話す。家長である父は黙ってその会話に耳を傾ける。おじいさんとおばあさんは昔話をしたりする。かつて日本にあった「生活スタイル」、携帯電話もスマホもなかった頃、「言葉に依らないコミュニケーション」がそこにあった。

 

住まいから囲炉裏端がなくなり、暮らしの場に家族全員が顔をつきあわし、話をするという空間がなくなったことからも、コミュニケーションの形が大きく変わった。

 

北海道開拓の村とアイヌの家「チセ」から、エネルギーとコミュニケーションのあり方を学んだ。

 

(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)

 

〔CELフェイスブック 105掲載分

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