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2014年01月23日 by 弘本 由香里

老と若があってこそ、天下泰平・五穀豊穣の舞に想う

 高度経済成長やバブル経済を経験してきた世代と、それ以降に育った世代。意識のギャップがしばしば話題に上ります。人口が増え財政が豊かだった時代から一転、人口が減少し財政が縮小していくなかで、社会保障の予算は増加の一途をたどっています。若い世代と高齢の世代が、どのようにリスクを分かち合い、不安を和らげ生活の質を高めていけばよいものか、悩みは尽きません。
 互いを想い、それぞれの力を活かし合っていくにはどうしたらよいでしょう。もちろん、法律や制度を整えていくことは大切なことですが、インフォーマルな生活文化が果たす役割も同じくらい大きいのではないかと思うのです。
 たとえば、古くから受け継がれてきた芸能のなかには、人々がともに生き合う風土を育んでいくための知恵が詰まっています。その一つに、能楽の「翁」があります。翁の舞は、能楽が成立する以前からあったもので、能楽に留まらず、人形浄瑠璃や歌舞伎、各地の神楽や大道芸まで、さまざまな芸能の中に取り入れられ、お正月や特別な祝賀の行事などの冒頭に披露される演目として、全国津々浦々で大切にされてきたものです。
 時代や地域によっていろいろな演出が行われてきたようですが、現在の能楽では、千歳(せんざい)と呼ばれる露払い役の若者の颯爽とした舞に始まり、次に堂々たる太夫が白色の尉(老人)の面をつけ翁となって厳かに舞います。続いて三番叟(さんばそう)と呼ばれる若者が、台地を踏みしめるように、躍動感あふれる舞を繰り広げ、やがて黒色の尉の面をつけて、鈴を手に豊かな実りを思わせる舞へと展開していきます。
 天下泰平を祝福する高貴な白い翁と対をなして、五穀豊穣を願い農耕儀礼を模した土の匂いのする黒い三番叟が組み合わされています。日に焼けた色の黒い尉の姿は何より親しみ深い存在として、庶民に愛されたのでしょう。三番叟は人形浄瑠璃や歌舞伎や神楽や大道芸の中で、独特の滑稽味を磨き、人々を喜ばせる姿へと育っていったようです。平安な暮らしを願う芸能の原点が、「翁」とりわけ三番叟の中にあるといっても過言ではないかもしれません。
 なにより注目すべきは、この演目が、老と若の見事な連携で成り立っていることです。若者が瑞々しい生命力を舞台いっぱいに行き渡らせ、歳を重ることの尊さを湛えた翁がゆったりと祝福を運んできてくれます。老若両者があってこそ、豊かな世界が続いていくことを物語っているのです。長く庶民の傍らにあり続けた、その姿の中に、先人たちは何と深いメッセージを込めてくれていたのでしょう。
 お正月から春先にかけて、あちこちの能楽堂で翁舞に出会うことができます。私も年初、住まいにほど近い大槻能楽堂(大阪市中央区)へ「翁」を訪ねました。瑞々しい千歳と威厳を湛えた翁、そして心躍る三番叟の姿に触れ、老若をつなぐ知恵を磨きたいものだと。

 ※図は翁の舞姿と面(2014年大槻能楽堂新春能のチラシの一部)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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