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2013年03月15日 by 弘本 由香里

いのちをくるむ布団に込められた願い

  桜の開花情報が列島を駆け上がっていく足音とともに、進学や転勤など、住むまち・住む家を変える人の行き来もあわただしくなる時分です。
 私がはじめて一人暮らしを始めた、18歳の春。1980年代の幕開けだったのですが、まだまだ古風な生活習慣が残っていたものでした。その一つに「布団(ふとん)」をめぐる情景があります。
 今では安価な布団が大量に流通して手軽に買い求められ、またあっさりと捨てられてしまうことも多い消費財になっています。けれども、時代を遡ってみますと、かつては泥棒が盗んでいく金目のものの一つが布団だったというくらい、暮らしのなかの貴重品だったのです。良質な綿(わた)と肌に優しい布であつらえた布団は、打ち直して永く使い続けられました。
 さて、一人暮らしの準備にと、祖父母がひときわ力を入れて用意してくれたのが布団でした。丈夫な布団袋に大事に詰められて、遠路はるばる送り届けられました。それ以来、なぜか時折、布団をつくったといって送ってくれていたものでした。時代は1980年代から90年代へ、消費社会の波が生活文化を席捲していき、私自身、祖父母の古風な営みが持つ意味やありがたみを顧みることもなく、やがて移り住んでいった住まいからは押入れが姿を消していき、布団の数も減っていきました。
 年を経て、祖父母が他界し、主のいなくなった古家の手入れに訪ねるようになりました。懐かしい押入れや箪笥のなかを覗いてみると、布団が丁寧にしまわれています。いのちをそっとくるんで、安堵して眠りにつくための綿と布が、人間にとってどれほど大切なものであったか、布団のたたずまいが無言で語りかけてくるようでした。きっと、祖父母は、身近な者たちのいのちを守り慈しむ気持ち、健やかに過ごしてほしいという願いを込めて、あたたかい布団を送ってくれていたのだろうなあと。そんな気がしてくるのです。
 311日、東日本大震災から2年を迎えました。2年前、いのちからがら、とるものもとりあえず避難先を求めていらっしゃる方々に、先年新潟で震災を経験した方々が、いち早くあたたかい布団を集めて休める場を用意されたというお話をお聞きしました。
 あわただしい年度末ですが、一日を終えて眠りにつくとき、布団のぬくもりの向こうに、いのちを守り慈しむさまざまな物語があることに、ほんの少しでも思いを馳せてみたいものです。
 ※写真は布団をくるむ大風呂敷

 

 

 

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