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2019年05月23日 by 池永 寛明

【起動篇】 「パソコン導入して、人減ったら困る」


「パソコンを導入したら、人減らししないといけないので導入しない」

ある自治体の人から聴いたことがあった。企業で一人一台のパソコンが導入されつつあった20年前、自治体ではパソコンの普及がおくれていた。その理由が「予算上の問題」と思ったら、それだけではなかった。効率化が進んで生産性があがりすぎると、自分の部署の要員を減らされると困るから、パソコン導入に反対するという動きであった。ホワイトカラーの生産性の低さの一因をみた。今、世の中でいわれている「働き方改革」の背景が垣間見える。


「ソフト化経済」という言葉が霞ヶ関にあった。

ITという言葉がうまれる前、霞ヶ関ではそう呼ばれていた。今から30年前、「これからはハードではなくソフトの時代だ」と国で検討されていた。その頃の「ソフト」とはなにかというと、コンテンツのソフトではなく、今でいうITスマホ、アプリケーションのことだった。しかし当時は軽く見られ、「ソフト化経済なんて、軽いよね」などとハード中心の「名門企業」の幹部の人たちに扱われていた。しかしなんのことはない、トヨタがソフトバンクと組む時代となった。30年前、ソフト化経済を嘲笑していた人たちは、スマホがなければ生活できないというこの状況をどう見ているのだろう。


スマホがでてきたとき、「こんなおもちゃみたいなモノを日本企業はやらない」と、日本のパソコン・携帯電話(ガラケー)メーカーがいったという。日本企業のそれまでの成功体験や価値観があったから、「あんな玩具のようなものは使いにくくてダメ。日本人にはキーがなければダメなのだ」と嘲笑した。そのスマホを玩具扱いした人たちが、今スマホを使っている。しかしなぜ日本人はスマホをつくれなかったのか ─ その答えはでていない。


「日本製のパーツがなければ、世界のスマホは動かない」というが、「スマホ」全体がうみだす付加価値はパーツよりも高い。スマホの機能・効率を中心に考える日本企業。スマホがうみだす付加価値・効能、楽しく豊かなライフスタイル、便利で生産性が高くなるビジネススタイルのあり方を考える海外の企業。とても大きなちがいである。


「ものづくり」において見ている風景がちがう。「モノ」とみる人・企業と、モノがつくりだす「コト」をみる人・企業に分かれる。ものづくりだけでなく、まちづくり、政策づくりもそう ─ 日本は同じ専門分野の人ばかりが集まって議論する。技術屋は技術屋ばかりで考える、事務屋は事務屋ばかりで考える。同じような背景・価値観の人たちで群がる。海外視察してもそう、現地の人と交流せず日本人ばかりで群がる。だから想定範囲内の答えとなる。だからとんでもないこと、尖ったもの、えっ?というもの、すごいものが生まれない。そもそも事務方からしたら、そんなものが出てきたら困る。


「多様な価値観・文化を融合しなければならない」というような海外での取り組みを聴いて、そうだそうだ、とだれもが口にするが、実際は同じ「専門」分野の人たちが集められ議論する(議論したというフリをする)。なぜか?─ 実は「めんどくさい」のだ。「専門外」の人を呼んで、事務方が考えているコトとは違うこと、異質のことがでてきて、軋轢、確執、摩擦、対立が「会議」のなかでにおこったら、大変なのだ、調整するのがめんどくさいのだ。155年前の幕末に黒船来航・開国の是非を議論していた当時の江戸城の姿から、私たちはどう学んだのだろうか。


AIロボット、5G… これからどうなるのか。AIロボット、5Gなど技術・製品と社会をどうつなぎ、これからのライフスタイルをどうデザインできるかに私たちは取り組んでいかねばならない。


(エネルギー・文化研究所 顧問 池永寛明)


日経新聞社COMEMO  514日掲載分