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2017年12月27日 by 池永 寛明

【交流篇】 顔の見えないビジネスと、顔の見えるビジネス

    

 

週末に大阪の自宅から車で2時間かけて滋賀の琵琶湖の西で過ごす。伊吹山に琵琶湖に竹生島が浮かびメタセコイヤ並木があり自然のなかで暮らす。雪深く、真冬には1m以上積雪する。いわゆる二拠点生活をしている。その地域には定住者とセカンドハウスの方が混在していて、定期的に地域の自治会の会議がある。定住者に高齢の単身者が増え、車の運転免許証を返上する人が増えているため、病院や商店への「移動問題」が話題となることが多い。近くの病院や商店まで車で20分ほどかかるので、日々の生活や暮らしのうえで、高齢者にとって切実である。

 

人口減少・超高齢社会に伴い「シェア文化」が進展するとの論調は多い。シェアビジネスがいろいろな領域で検討されている。カーシェアリングも各地でよく見かけるようになった。モノをつくり、より多くの人に買っていただきたいと考えるビジネスシナリオでは、車を買う人が少なくなるのならば車を使っていただける用途を考える、だからカーシェアリングだ、ということは「正攻法」にみえる。

 

どんな人が住んでいる地域にその事業をしたらいいのか、どのような車がいいのかといった計画を考える。事業採算性を考えるので、若い人が多い住宅地や都心部がカーシェアリングの「メインターゲット」となる。しかしながら高齢者が多く住まわれるエリアや、地方部では採算性は成立しないとビジネスターゲットから外され、地域としての「移動」という課題はより深刻化していく。

 

「私たちは車から入っているのではありません。カーシェアをしませんかと事業をしているのではありません」と話すのは宮城県石巻市にある日本カーシェアリング協会の吉澤武彦代表理事。東日本大震災のあと、被災地に入り、仮設住宅をまわり人々の話に耳を傾け、困っていること、悩んでいることをひとつひとつお聴きし、その困っていることを車で解決できることを一緒に考えていく場を時間をかけてつつくっていった。

 

「車をきっかけに人々が集まり、人と人とがつながり、輪をつくっていけたら、カーシェアからコミュニティをつくるお手伝いができたらと考えています」

 

「カーシェアリング」の形も都市部で展開されているものとはちがう。カーシェアとして使う自動車も各企業からいただき、仮説住宅のコミュニティの人々でそれぞれの独自の「運営ルール」をつくり、運転する人、利用する人といった役割分担をつくりおこなう。みんなで「カーシェアリング」という仕組みをまわす。地域コミュニティごとにカーシェアリングかたちがちがっている。

 

「嬉しいことがあるんです。これが始まるまでおとなしかったおじいさんがドライバーとして頑張り、女の人たちの人気者になって、自治会の会長になられたのです。またカーシェアリングがつくりだすコミュニティのなかで「小旅行」があって、日常の買い物や病院通いだけでなく、この小旅行を楽しみに人々が元気になって、カーシェアの輪がひろがっているのです」

 

同じカーシェアリングではあるけれども、供給者側の目線でつくりだした不特定多数の顔の見えない「シェアリング・ビジネス」ではなく、お客さま目線からつくりだした、使う人と運転する人の顔が見える「シェアリング・コミュニティビジネス」との大きな違いを感じる。これからの日本の可能性が見えてくる。

 

(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)

 

日経新聞社COMEMO  1221日掲載分

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