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季刊誌CEL

井戸 理恵子

2016年03月01日

コラム「日の国ニッポンの理」 備えるための端午の節供

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2016年03月01日

井戸 理恵子

住まい・生活

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情報誌CEL (Vol.112)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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端午の節供は、今や男の子が元気に育つようにと、武者人形を飾り、鯉のぼりをあげて祝う日です。しかしながら、かつて端午は女性の成長を祝う日でした。旧暦5月は古名では皐月。この月、早乙女と呼ばれる田植えをする少女たちが稲の穀霊を迎えるため、菰を敷き詰めた納屋に籠って身を清めます。また、早乙女以外の少女たちも衣食住に関わる作物などが実る力・技術を神からいただき、丈夫な子供が産めるように、とその成長を祈ったのです。
暦においての「端午」は「午月の端(はじめ)の午の日」。旧暦5月は新暦では梅雨と重なります。「梅雨」は中国では「黴雨」と表記される程、湿度の高さや黴の発生が人々を悩ませましたが、梅雨は秋の収穫にとって大切な恵みでもありました。そこで、常日頃、季節を愛でる習慣をもつ日本人は、「梅の実が熟す」頃として「黴」と同じ音をもつ「梅」の文字を充て、「ばいう」と呼び習わしてきました。季節を美しく捉える日本人は「黴」の文字を使うことを憚ったのでしょう。
しかし、長雨は様々な湿病をもたらします。そこで中国の思想を取り入れてきた貴族社会では特にこの端午の正午に、薬効の高い生薬を求め、山へ分け入る「薬狩り」が行われました。五行思想では「午」の重なる日・時間は「火」の性質がより強くなると考えられ、水気の多い時期において端午は特別な日とされたのです。
こうして得た「端午の生薬」のうち、最も重用されたのが菖蒲です。ただ、ここでいう菖蒲は、華やかな花を咲かせるアヤメ科の花菖蒲や杜若とは異なる植物で、黄色い筒状の花をつけるサトイモ科の植物です。その葉は強い香りを放ち、尖った葉の形を剣に見立ててはさまざまな邪気を祓う力があると信じられていました。やがて、この魔除けの草は「菖蒲」の音読みとしての「尚武」に通じることから、武家社会になると、端午の節供においての供物として使われ、男の子の祝いの日として定着したのです。
さて、端午の生薬・菖蒲は今でも菖蒲湯としてお風呂に使われますが、この時期特有の生薬は他にもあります。たとえば、「梅雨」に縁のある梅の実。梅干、梅酒、黒梅など、疲労回復、抗酸化作用などさまざまな効用が認められ、各地で多様な伝統食として受け継がれる、日本人の食文化になくてはならないものです。また、漢方で十薬といわれるほど多くの効能をもつドクダミは、体内の水分量や皮膚の汗腺の調節をし、老廃物を取り除くなど、夏に最大限にその力を発揮します。