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季刊誌CEL

西尾 久美子

2016年03月01日

能楽における技能継承と人材育成について

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2016年03月01日

西尾 久美子

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情報誌CEL (Vol.112)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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能楽における技能継承と人材育成について

 

組織を構成するのはひとりひとりの個人であり、個人の知識・スキルを継続的に獲得・発揮させることは、どの組織にも共通する課題である。しかし、人材育成は個人だけで完結するものではなく、組織がキャリア育成の仕組みをどのように整えるかも重要である。600年超の歴史のなかで、個人のキャリアの成長と、流儀の技能を引き継ぐ仕組みを確立させてきた能楽から、現代の組織が学ぶべき、人材育成と技能継承のあり方を見る。


能楽(*1)は、14世紀に観阿弥や世阿弥によって確立された歌舞劇である。2008年にユネスコの無形文化遺産にも指定され、日本の伝統文化を代表するものとして広く知られている。 能楽の舞台では、若手からベテランまでの能楽師(*2)が一堂に会している。本稿では、能楽における人材育成の仕組みに注目し、伝統技能を現代にいたるまでいかに継承してきたか、その特色を考えていく。


「年来稽古条々」

 

まず、能楽の人材育成について、歴史をひも解いてみよう。能楽の礎を父観阿弥(1333〜84)とともに作った世阿弥(1363?〜1443?)は、『風姿花伝』(*3)という有名な書物の中に「年来稽古条々」(生涯にわたる能の稽古の心得)という技能育成に関する項目を記述している。この中で世阿弥は、生涯にわたって能楽に携わる人間の道のりを年齢に応じて7つの段階(第1段階:7歳[幼年期]より、第2段階:12〜3歳より[少年期]、第3段階:17〜8歳より[変声期]、第4段階:24〜5歳より[青年期]、第5段階:34〜5歳より[壮年期]、第6段階:44〜5歳より[初老期]、第7段階:50有余[老年期])に区分し、それぞれの時期に育成者や被育成者が気を付けるべき点を次のようにまとめている。
初期の第1と第2の段階では、本人の意欲を大切にして、無理に教えこまないようにするなど育成する側の関わりが重要であること。第3段階では、変声期という身体の変化に直面してモチベーションが低下するが、キャリア形成においてこの節目での対応が一生を決めることになるので心して稽古に励むこと。


 

(*1)能と狂言をさす総称。
(*2)能楽を演じることを職業とする。能役者ともいう。
(*3)能楽の芸術論を述べた書。世阿弥が記したものであるが、父観阿弥の考え方も入っており、親子二代の能楽師の経験に基づく考え方がまとめられたものである。