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デザイン・ユア・ライフ

豊田 尚吾

2014年11月17日

ウェルビーイング講座<生活経営論>(No.2-3)「費用と便益」

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備考

2014年11月17日

豊田 尚吾

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費用と便益の“比較”

 私たちの生活は意思決定の連続で成り立っています。朝何時に起きるのか。朝食は食べるのか。食べるとしたら何を食べるのか。何時の電車でいつ出勤(学校に到着)するのか。・・・当然、何かを決定するときには納得感のある判断基準が必要です。その時、非常に有用な方法の一つは、ある行動にともなう費用(コスト)と便益(ベネフィット)を考え、それらを比較して便益>費用であれば、実行する価値ありと判断するというものです。

 

 その際のポイントが二つあります。一つは“比較”するために費用も便益も同じ尺度を持っていなければならないということです。例えば、恋人のために花を育てるという行動を費用と便益で評価するとしましょう。それに必要なもの(費用)は花の種で、それが「2グラム」だとします。便益はお礼のデート1回だとしましょう。2(グラムの種)>1(回のデート)ですが、この不等号を合理的だと考える人はいないでしょう。尺度が違うのに数字だけを比較しても意味がないからです。

 

 ではどうすればよいでしょうか? 一般的な経済学では「効用」という尺度を用います。ウェルビーイング講座<生活経営論>(No.2-1)「ウェルビーイングと効用」で取り上げた、あの「効用」です。そこでは「効用は自分のことだけ、しかも最終的な結果だけに注目した「幸せ」のようなものだと考えてください。」といいました。

 

 花の例でいえば2グラムの種を手に入れるための苦労を(マイナスの)効用という観点から評価し、花をプレゼントしたことで勝ち取ることのできる1回分のデートのうれしさを(プラスの)効用という観点から評価し比較をします。うれしさ(プラスの効用)+苦労(マイナスの効用)>0、つまり合計値がプラスであれば、花を育てるという意思決定が成立するでしょう。(ここでは花に水をやったり、日光をとり入れたりといった行動は話を簡単にするために無視しています)

 

 実際の効用比較時、費用、すなわち種を手に入れる苦労を評価すると-5(マイナス5)で、便益、すなわちデートのうれしさが10と言えれば、(10-5=5)のプラス!、あるいはデートのうれしさは花を育てる費用の2倍!という表現が可能です。しかし一般に効用は0になるような原点を持ったり足したり引いたりできるような尺度とは考えられていません。そういう尺度(比例尺度といいます)だと確かに便利なのですが、理論を組み立てていく上では不都合なことが起こりかねないのです。したがって、そこまで扱いやすい尺度とは定義せずに、せいぜい費用と便益のどちらが大きいか、小さいか、あるいはまったく同じかを判断できればよいと考えます。とにかく、デートのうれしさが種取得の費用を上回っているのだと。
※比例尺度は原点0を持ち、差異が数字で表せるので、足したり引いたりかけたり割ったりという数学的な“計算”をすることができます。他に、加減はできるけれども乗除はできない間隔尺度、大小のみで加減もできない順序尺度などがあります。

 

お金は便利な基数的尺度

 しかしそのような細かい話は現段階であまり気にしないほうが分かりやすいかもしれません。日常生活の意思決定を考えると、実際には比例尺度を用いて判断できるケースも多いからです。それは「お金」で費用と便益を比較できる場合です。お金は0という基準を持っていますし、数字で表すことができるので、加減乗除が可能な比例尺度です。目の前にあるアイスクリームを買って食べるかどうか。費用は価格で表されています。例えばそれが100円だとしましょう。あなたはそのおいしさを味わう価値を150円と評価したとしましょう。もっと現実的に言えば、そのアイスのためには財布から150円なくなってもかまわないと考えているということです。

 

 もしそうであるならば便益は費用を50円分上回り、お金で評価した便益は費用の1.5倍ある、といえます。ちなみに上回った50円分を消費者余剰といいます。もしアイスの他に同じく100円のバナナもお店で売っていて、その価値を170円と評価するならばバナナも一緒に買っていいでしょう。しかし、財布の中に100円しか入っていないなら? アイスよりもバナナを買った方が費用と便益の比較からいえば、あなたはより大きな効用を得ることができることになります。

 

 このような判断は改めて言われなくてもだれもが日常的に行っている行為です。しかし、費用と便益という考えを明確に意識することで、実際の生活で直面する、複雑に入り組んだ意思決定の束に少しでもより合理的に(納得感のある)対処ができるようになります。

 

 実際には費用や便益に不確実性が伴っているケースや金銭評価できない様々な要因が加わってくることも少なくありません。不確実性というのは、例えばある商品を購入したことで得られる便益が事前には確実に評価しつくせないということです。耐久財なのに、すぐに壊れるかもしれませんし、思ったほど便利でないかもしれません。

 

 そのような場合でも、やはり費用と便益による評価という「基本」があることは、そこから出発して、あるいはそこに一旦戻って考えを整理できるという意味で有用です。したがって、費用便益の考え方は一つの生活の知恵としてしっかり認識しておく必要があると思います。

 

 冒頭で費用便益の考え方にはポイントが二つあって、その一つが尺度の統一だと述べました。もう一つは機会費用という考えです。それは次回に取り上げることとしましょう。

 

 

 

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