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情報誌CEL

下村 純一

2011年01月11日

連載 関西近代化遺産紀行 第7回

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備考

2011年01月11日

下村 純一

都市・コミュニティ

地域活性化

情報誌CEL (Vol.95)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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 初めて大阪の地下鉄に乗ったのは、30年以上も前である。時期も駅名も覚えてはいない。しかし、まるでドームにでも入ったかと錯覚したホームの印象は、強烈に頭に焼き付いた。
 その頃の東京の地下鉄は、今と違い車両は小さくエアコンは無く、轟音を響かせて走るなど快適さにはほど遠い乗り物だった。殊に東京で最初に開通した銀座線はひどかった。車両と同じ位に狭さを感じさせるホームには、リベット留めの鉄骨柱が林立して、息苦しいだけでなく、何やら工場を歩く気分に陥ったものだった。そのためか、あの頃の私は地下鉄が嫌でしかたなかった。
 ところが大阪では、まるで様子が違った。車両の何倍もあろうかという広いホームを、それを上回る幅で高いヴォールト状の天井が覆っていた。柱は1本も見当たらない。『何だ、このドーンとした広がりは』と、驚きを通り越して衝撃に近い感動を味わった。
 そんな想い出のある地下鉄御堂筋線のホームを改めて取材した。昭和8(1933)年に最初に開通した御堂筋線4駅のうちの淀屋橋と心斎橋の2駅を選んだ。
 両駅とも壮大なヴォールト天井を張るホーム空間である点は、当初のままである。当時とは比べることもできないほど人の乗降が激しくなっているはずなのに、今もホームの印象はゆったりとしている。交通機関は単に人の輸送手段であってはならないとでも言いたげな、このホームのゆとりは貴重だ。
 当初からもっとも大きく変わった点は、淀屋橋駅の2階通路デッキであろう。増えた人をさばく新しい階段を設けるために造られたものだが、柱の1本も立っていない懐の深い大空間だからこそ、地下鉄ホームに2階を増設するなどという大胆な改修が可能だったと思われる。床、天井、壁は時に応じて変えられてきたように見受けられたが、随分と古そうなものを見つけた。当初からあったとも思えないが、太くどっしりと聳え立つステンレス製の通風口、同じくステンレス製の細いアナウンス塔、階段手摺りに張られた淡い色彩のタイル、駅ごとに形を違えたシャンデリア然とした照明など。予想もつかなかったものでは、百葉箱だ。昔はこれで気温や湿度をチェックしては送風量を調節していたのではあるまいか。こうした今では他の代替品に変えられているようなものでさえ邪魔物扱いされず、このホームにはある。
 巨大ヴォールト天井下に開かれたこれらの駅は、80年を越える自らの歴史を語るものたちを残しつつ、さらにこれから先、何十年も人の乗降を見ていくのだろう。

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