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情報誌CEL

西川 栄明

2011年01月11日

人の暮らしと、究極の自然素材である木との関わり

作成年月日

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媒体(Vol.)

備考

2011年01月11日

西川 栄明

エネルギー・環境
住まい・生活

地域環境
住宅
住生活

情報誌CEL (Vol.95)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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 「いい木の香りがしますね」
 「なんか、ぷーんとしてきます」
 わが家を初めて訪ねてくる人が、玄関を開けるなりこのような言葉を発することがたびたびある。
 パイン(マツの仲間)材で建てたログハウスに住み始めて十数年になる。長年木に囲まれて暮らしていると、鼻の感覚がマヒしてしまったのか、今では木の香りを意識することもない。床も壁も天井も、節が目立つ無垢のパイン材がむき出し状態。そんな中で、食事をし、仕事をし、本を読み、粛々と日々の生活を送る。
 取材などで家を長期間あけることが多いのだが、自宅に帰ってきて安らぎのようなものを感じるのは、木に囲まれた空間で暮らせることに知らず知らずのうちに体が反応しているからだろう。ぐっすり眠れるのは、枕のせいだけではなさそうだ。
 「レトルトカレーを木のスプーンで食べると格段においしくなる」
 自作の木のスプーンを食事の際に使っている友人がいる。クルミの木を彫刻刀で削り出した。見た目は少しバランスがとれていない気もするが、自分で仕上げた木のスプーンはかわいくなってくるらしい。口あたりも使っているうちになじんできたという。
 以前、私は木のカトラリーに関する本を上梓したことがあり、執筆する前に何十種類もの木製スプーンやフォークを集め、すべて使い心地を試してみた。今でも手元にどっさりあるので、シチューやカレーを食す際に「今日はどれを使おうかな」と、その日の気分で選んでいる。ノミ跡が残っていて少しくちびるに引っかかるもの、きれいに機械加工して仕上げて口の中にペロッと滑り込むもの…。どれも、金属製やプラスチック製にはない、木特有のやわらかさと堅さを兼ね備えた質感が伝わってくる。
 「漆のお椀は箱の中に入れて大事に押入れの奥にしまっておくのではなく、どんどん日常生活で使ってくださいよ。漆器は使わないとね。扱いも簡単なんですから」
 ある木工芸家を取材した折に聞いた言葉だ。どうも漆器の扱いはやっかいだなと感じている人が多い。しかし、実際には無茶な扱いをしなければ実に使い勝手のいい器である。私は普段から山中塗のお椀を使っている。先ほどの友人のカレーの話と同じように、みそ汁の味が漆器の口あたりによって、おいしさが増すような気がしている。
 こんなふうに、木の道具を使いながら木に囲まれた暮らしをしていると、何となく日々の生活に潤いが生まれてくる。科学的にどうのこうのというのではない。感覚的なものではあるが、たしかに木が何らかの起因となってもたらされるのだろう。

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