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新着情報

研究報告

豊田 尚吾

【研究レポート】地域別認知度から探る、地域キャラクターの魅力

No.

作成年月日

2013年06月10日

執筆者名

豊田 尚吾

備考

以下の本文と添付PDFは同じ内容です

はじめに

 

熊本県のくまモンを代表格に、全国各地で地域キャラクターが活動している。そこではいわゆる「ゆるキャラ(ゆるいキャラクター)」と呼ばれるものが多数を占めている。一方で、運営ノウハウやコスト管理が問題になる場合もある。本レポートでは生活者へのアンケートデータ(※)をもとに、地元のキャラクターの認知、およびそれが地域の愛着と関係しているかどうかを検討する。結論は以下のとおりである。

・キャラクターの認知度は地域によって大きな差が存在する。一般に地方の認知度は高く、都市部は低い。

・認知度が低い場合には、地域を代表するこれといった人気キャラクターが存在せず、想起するキャラクターが分散する傾向がみられる。

・キャラクターの認知と地域への愛着には統計的に意味のある相関関係が確認できる。このことから、地域アイデンティティの確立手段として、地域キャラクターを活用できる余地はあると考える。

「ライフスタイルに関するアンケート2013

大阪ガス株式会社 エネルギー・文化研究所

実施時期:201339日〜14

調査対象:日本全国(性別、地域、年齢階層がほぼ国勢調査と同様になるようセルの割り付けを行っている)

調査人数:5000

実査:株式会社マクロミル

 

 

地域キャラクター、最近の動向

 

地域キャラクターとは、特定の企業や営利団体に属さず、特定の地域を盛り上げることを目的として活動する架空のキャラクター(デザイン、ストーリーなどの統合体)を表す。その中の多くは「ゆるキャラ」といわれている。

 

ゆるキャラの名付け親とされるみうらじゅん氏の定義によれば、ゆるキャラとは

1. 郷土愛に満ち溢れた強いメッセージ性があること。

2. 立ち居振る舞いが不安定かつユニークであること。

3. 愛すべき、ゆるさ、を持ち合わせている事。

とのことである。そのため、自らをゆるキャラではないと公言する地域キャラクターもいる(奈良のせんとくんなど)。

 

 くまモンの関連グッズの売り上げは300億円に上るとみられ、昨年のゆるキャラグランプリ優勝の「バリィさん(愛媛県今治市)」も観光物産の売り上げや観光客数の増加などに貢献しているという。一方で、地元キャラクターの知名度を上げるための“工作”が批判されることある。最近では震災の復興予算を関係のない地域のゆるキャラに利用しようとしているといった話題もあった。

 このように、地域キャラクターは自治体やNPOなど、キャラクターのマネジメントノウハウに乏しい組織が運営している場合も多く、必ずしも効果的な利用がなされていない場合もある。一方で、地域のイベントや観光地、商業地で身近に触れ合うことのできる存在は、市民や立ち寄り客とその地域をつなぐ役割を果たしていることは間違いない。

 このような中、次節からは大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所が2012年、2013年に行った、地域キャラクターに関するアンケートデータ(「ライフスタイルに関するアンケート201320122013年調査に関しては1ページ参照)をもとに、その認知度と好きな理由、地域への愛着の関係性などを検討する。

 

 

地域別キャラクター認知度

 

前述のアンケートではまず「あなたが住んでいる地域で活動しているキャラクターを知っていればご記入ください。(彦根市のひこにゃんなど)※該当するキャラクターが複数いる場合には、より身近なものを1つだけご記入ください。」という質問を行った。全回答者5,000人中、実際のキャラクター名を記入したのが1,532名(30.6%、2013年調査)。単に「知っている」というだけでなく、3割が地元のキャラクター名を記憶しているというのは高い水準だといえるのではないだろうか。

 

 一方、その結果を細かく見ていくと、地域差が非常に大きいことが分かる。全国を8地域に分けたうえでの回答率は四国地方が54.8%で最も高く、関東地方が22.8%で最も低い(図1。その差は実に2.4倍を超えている。2012年にも同様の調査を行っており、四国地方が42.3%、関東地方が17.3%で2.6倍近かった。それと比べれば多少は差は縮まっていること、加えて全体の認知度が高まっていることも分かる。

 

 

 全国でいえば昨年の認知(想起)率が25.5%、今年が30.6%であるから5ポイントアップ、1.2倍になっている。このことからも地域キャラクターの盛り上がりが顕著であることがうかがえる。

 

 都道府県別でみると格差は一層激しくなる。2013年のデータで認知(想起)率の最高は熊本県で87.9%、最も低いのが和歌山県で4.5%であった。和歌山県の場合、サンプル数が少なかった(全5,000名の回答者中22名)ので、この数字がどこまで信憑性があるかは定かではない。しかし46位、47位の神奈川県(13.7%)、東京都(13.0%)は人口も多くまったく意味のない数字とは言えないであろう。

 熊本県の場合、当然のことながら、想起されたキャラクターはほとんどの場合くまモンであり、圧倒的な力を見せていた。同様に、キャラクター認知率が高い県の多くは、自他ともに認める代表的な地域キャラクターが存在している。島根県のしまねっこ、愛媛県のバリィさん・・・。逆に認知率の低い県では、これ以外ないといわれるようなキャラクターが不在であることが見て取れる。

 また、一般に関東、中部、関西といった大都市圏で地域キャラクターの認知度が低くなっており、地方圏>都市圏、西日本>東日本という傾向が見て取れる。(表1:黄色地は主なキャラクターの中でも地域内で人気の高かったもの)

 

 

 

高い知名度のキャラクター

 

ではどのような地域キャラクターの想起率が高いのであろうか。予想通りくまモンが128票で1位だが、2位はチーバくん(57票:千葉県)、はばタン(51票:兵庫県)、バリィさん(46票)と続く。地元キャラクターとの条件で回答しているため、人口の多い地域は票が多くなる。

 そこで別の質問「あなたが住んでいる地域以外で活動しているキャラクターで好きなものがいればご記入ください。いなければ「特にいない」を選んでください。※該当するキャラクターが複数いる場合には、より身近なものを1つだけご記入ください。」と聞いたうえで「『いる』とお答えの方は、その理由をお教えください。」とその理由をテキスト(文章)で記入してもらった。

 その結果が2である。くまモンが一層圧倒的であり、全898票中、過半数の459票を占めている。続いてひこにゃん、バリィさんと続き、最近一部で話題のふなっしーがせんとくんをおさえて4位につけている。

 

 

 ここで特徴的なのは、地域キャラクターを好きな理由として、「かわいい」という評価は共通するものの、上位にランキングされるキャラクターには+αの魅力が備わっていることである。くまモンは着ぐるみが親指を立てるきめポーズをはじめとして「動き」に特徴がある。ひこにゃんはゆるキャラの王道を行く「癒し」力を持ち、バリィさんは相撲を得意とするだけあって、力強さが認知されている。このようなプラスの差別化要因をきっちりと備えているところが注目される要因の一つとなっているようだ。

 

 

地域への愛着と地域キャラクター

 

地域キャラクターを活用する目的の一つは、住民や観光客にとその地域とのつながりを強化することにある。地域ブランディングといってもいいし、地域アイデンティティの醸成という表現を用いることもできるかもしれない。

 そこでここでは住民に対して、地元キャラクターの認知度と、その地域への愛着との関係を見てみた。具体的には今まで検討してきた「あなたが住んでいる地域で活動しているキャラクターを知っているかどうか(知っている、知らない、の2通り)」と、別の質問にある「あなたは自分の住んでいる地域に愛着を持っていますか(全くそう思う〜全くそう思わないまでの5段階評価)」とのクロス表を作成し、統計的な有意性(意味があるかどうか)を確認した。

 その結果が2である。グラフの形状を見たとおり、キャラクターを認知している回答者ほど、地域に愛着を持っている度合いが高いという結果となった。もちろん、これだけでは「因果関係」を証明したことにはならない。すなわち、地域キャラクターの存在や活動を知ったり、交流したりといった経験を通じて、より地域に愛着が増したという、原因と結果を表しているわけではなく、単に相関関係(一方が高いと、もう一方も高いという事実関係)を表しているにすぎない。

 

 

 逆の因果、すなわち、もとから地域に愛着があるからこそ、地域のキャラクターにも関心をもち知識があるという人も多いだろう。あるいは地域に根差した仕事や活動をしているうちに地域キャラクターの知識も得、並行して地域への愛着も高まったという可能性もあるだろう。

 おそらくはそれらの相乗効果というものがあり、厳密な因果関係を特定することはできないし、する重要性もないということであろう。地域キャラクターがどういう形ではあれ、個人と地域の接点となったり、地域に目を向けるきっかけになったりする事実の積み重ねが重要なのだと考える。

 

 

考察

 

以上、簡単なデータの検討を行うことで、地域キャラクターの認知について考えてきた。キャラクターは文字通り「個性」であり、他との差別化要因になりうる。一方で、安易な導入や運用は地域のブランディングやステイクホルダーと地域とのコミュニケーションを混乱させかねないリスクにもつながる。

 現在は多くの地域で勢いに便乗したキャラクター乱造が行われている。しかし、いずれそのベネフィットとリスク(≒コスト)との兼ね合いから、多くの地域キャラクターが淘汰されていくことになるだろう。それ自体は悲観することでもなく、むしろ適者生存で力を持った地域キャラクターが生き残っていくことの方が望ましい。

 もちろん、上位何番までしか生き残れないというものではなく、地域の実情に合った、地道な活動をしているキャラクターは十分活躍の可能性を持っている。マスメディアに取り上げられる必要はなく、役割をしっかり果たせる地域キャラクターとは何かということを考えれば、自ずと適切な方向性が見いだせるであろう。

                                              以上