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新着情報

研究報告

豊田 尚吾

【研究レポート】60歳代からの資産と幸福度

No.

2013-04-22

作成年月日

2013年04月22日

執筆者名

豊田 尚吾

備考

以下の本文と添付PDFは同じ内容です

 

はじめに

 

 大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所は生活者のライフスタイルや意識を知るため、「ライフスタイルに関するアンケート」というネットアンケート調査を毎年行っている。本年も201339日から14日にかけて同様の調査を実施した

 本レポートはそのデータから、60歳代以上の生活者の資産状況と幸福度に注目し、分析した結果を報告するものである。

 

 60歳からは多くの被雇用者(いわゆるサラリーマン)にとって、退職というイベントが控えている。その後はフローとしての給与所得は頭打ちとなり、年金収入あるいは資産運用または取り崩しなどで生活を賄う技術が必要となる。では実際に60歳代以上の資産状況はどのようになっているのであろうか。また、彼らの生活実態はどうなっているのか。以下、データを用いた考察を行う。

 

結論は以下の通り、

・金融資産、および所得と幸福感の間には正の有意な関係が存在する。1年限りの所得よりは、ストックとしての金融資産の方がより強い影響を持つ。

 

・一方で、お金による幸福感への影響力には一定の限度がある。お金が少ない状況でも半数程度は自らを幸福であると評価している。これは幸福感の享受にはモノの消費だけでなく、健康、交流、自己実現といった多様な要素が影響しているという、既知の知見とも整合的である。

 

敷衍すれば、社会のあるべき姿を議論する場合、経済面の充実、すなわちお金で測った豊かさがなければ幸福感を高められないことは事実であるものの、金銭的評価がわかりやすいという点で“過度に重視されがち”であることを理解しておく必要がある。

 

※「ライフスタイルに関するアンケート2013」大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所

実施時期:201339日〜14

調査対象:日本全国(性別、地域、年齢階層がほぼ国勢調査と同様になるようセルの割り付けを行っている)

調査人数:5000

実査:株式会社マクロミル

 

60歳代以上の資産分布

 

 一般に年齢が高くなるほど、収入の格差が蓄積し、資産格差が広がることが知られている。本アンケートでも世帯の年収と純金融資産(預貯金などから住宅ローンなどの借入金を引いたもの)を聞いている。もちろん回答者の自主的な回答であることは踏まえておく必要がある。

 

 所得の分布をみると300400万円をピークに山なりの形になることは全体の分布とあまり変わらない(図表0)。

 

 

 一方、資産の分布は全年齢階層とは大きく異なる。図表1は純金融資産分布(%換算)を、60歳未満層、60歳以上層、25歳以上30歳未満層の3つについて表したものである。


 


 
若者である25歳以上30歳未満でみると「マイナス〜100万円未満」という最も低い階層をピークに急な滑り台のようにシェアが落ちている。途中、純金融資産額1000万円前後クラスが膨らんでいるが、これはきりのよい数字であるがゆえに「だいたい1000万円くらいかな」というふうに選択されがちであること、あるいは1000万円という資産形成の目標にしやすい目安になっていることで若干の集中が起こっていると考えられる。そうであるならば、資産は金額が多額になるほど人数は少なくなるという、比較的単純な構造をしているといえよう。

 

 60歳未満層の分布をみると、基本的な傾向はあまり変わらないものの、1500万円以上の資産に小さな山が見えてくる(2000万円〜3000万円のクラスがその山のピーク)。60歳以上になると「マイナス〜100万円未満」クラスと「2000万円〜3000万円」クラスのシェアがそれほど違わなくなる。具体的には前者が全体の13.7%、後者が12.0%である。500万円以下が60歳以上層全体の34%、2000万円以上も34%というように、完全な二極化状態にあることが分かる。

 

資産と幸福度、所得と幸福度

 

 今一度、60歳以上層のみ(1477人)の純金資産分布を見ると図表2のようになる。資産分布と関係のありそうな個人属性とを見ると、性別や同居携帯などとは関係がみられず、学歴と職業のみに統計的に有意な傾向が確認できた。すなわち、高学歴であるほど資産が多く、パート・アルバイト等では資産が少ないという、あまり驚きのない結果である。



 

 では、資産が多いほど、つまりお金持ちであるほど現在幸福感を感じているのであろうか。そのような当たり前の問題意識(疑問)について、本節では単純なクロス集計をもとに確認をしてみた。結果は統計的に有意な差異がみられ、資産額が多いほど幸福であるとの結果が得られた。それを表したのが図表3である。黄色地のセルは各資産階層における幸福度の分布を見て、シェアの大きな上位5位までに入ることを表している。



 

 これを見ると、大まかに言えば資産額の多寡と幸福度に関係があることが分かる。全体、つまり60歳以上の平均的な幸福度を見ると、広義の「幸福である」=「非常に幸福」+「幸福」+「どちらかといえば幸福」と回答しているのは全体の約72%、それに対して「資産1億円以上」クラスでは約88%、「マイナス〜100万円未満」クラスでは約55%となっている。

 

 一方、「マイナス〜100万円未満」クラスであっても過半数が「どちらかといえば幸福である」以上を選択していることにも注目したい。

 

 お金という点では資産(ストック)だけでなく、年々の所得(フロー)も影響するかもしれない。そこで所得と幸福度についても同様の検証を行った。結果は同様に統計的には有意な結果を得た。すなわち、年間の所得が多いほど、幸福度も高く選択しているということである。

 

 前述したように、年収は資産に比べ集中度が高いので、「1億円以上」クラスは1人しかサンプルが存在しない。そのため広義の幸福シェアの計算も所得額の上下約150人ずつで行ったところ、年収200万円未満(1477人中147人)で広義の幸福と回答しているのは約59%、年収900万円以上(1477人中162人)では約83%となった。やや差異が不明確になっているとはいえ、傾向としては同じといえるであろう。

 

 最後に資産と所得の両方を同時に見たときの幸福度との関係を調べた。資産も少なく、所得も少ない場合、幸福度にどのような影響があるのだろうか。統計的な有意性は言うまでもないので、どれだけその違いが極端に表れるのかが関心の対象となる。結果、資産が「マイナス〜100万円未満」で所得が「100万円未満」という分類上両者ともに最も少額のクラスで(1477人中25人)、広義の幸福のシェアは64%であった。資産が同じで所得が「100万円〜200万円未満」の場合48%、資産が「100万円〜200万円」で所得が「100万円未満」の場合40%となる。このように、幸福を選択する人の割合が極端に激減するということはなく、お金と幸福度の関係の閾値の存在を意識させる結果となった。

 

考察

 

 高齢社会が現実のものとなり、その生活経営問題が今後一層重要になってくることは疑いがない。その際、ただ単に社会としてその生活を支えていけるか、それが持続可能かということだけではなく、高齢者が幸せな生活を享受できるかどうかという視点をなくしてはならない。そう考えると、現実問題としてのお金と生活者の主観的な幸福感の関係を分析することは重要である。

 

 そのような問題意識から、資産(所得も含め)と幸福感の関係をクロス分析による統計的な有意性の確認という方法で見た。結果、万人が予想する通り、金融資産、および所得と幸福感の間には正の有意な関係が存在することを確認した。その際、1年限りの所得よりは、ストックとしての金融資産の方がより強い影響を持つことが示唆された。

 

 一方、お金による幸福感への影響力には一定の限度があり、お金が少ない状況でも半数程度は自らを幸福であると評価している事実を見逃すべきではない。本稿では取り上げなかったが、人間関係における生活充足度(満足感)などとお金の関係は(有意に正ではあるけれども)それほど顕著ではなかった。

 

 幸福感の享受には財・サービスといったモノの消費だけでなく、健康、交流、自己実現といった多様な要素が影響していることがすでに知られている。お金と幸福感との関係に一定の限度があるという今回の結果は、その知見とも整合的である。

 

 敷衍すれば、社会のあるべき姿を議論する場合、経済面の充実、すなわちお金で測った豊かさがなければ幸福感を高められないことは事実であるものの、金銭的評価がわかりやすいという点で“過度に重視されがち”であることを理解しておく必要がある。それらを一層明らかにするためにも、主観的幸福感の構造を検討していくことに意味がある。

 

 以上が各種分析を通じた、本稿の結論である。