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2018年12月03日 by 池永 寛明

【場会篇】 神様、王様がいっぱい住む日本、どないなってんねん

 


「めったに来ない子どもさんが来られて、洋服が汚れているとか爪が伸びているとか、一方的に文句をいわれる。せっかく来られているのに自分の親と殆ど会話しないで、さっと老人ホームの部屋をのぞいただけで、すぐ私たちスタッフのところに来られいろいろな要求をされて、あっという間に帰られる。おじいちゃん、ずっと心待ちにされていたのに、可哀想」と、先週のCOMEMO「本当は、一人ではなく一緒にいたい。」を読んだ若い人からの反応があった。


お金を出しているのだから、そうするのが当然、これをするのがあたり前とスタッフへの要求が多い。日夜頑張っているスタッフに「ありがとう」のひとこともない。家族といっしょ、近くに住むのが普通の海外に対して、日本はとかく親といっしょに住むのが嫌がる人が多い国になった。親自身が困ったことを子どもに押しつけたくないと言っているが、本当はいっしょにいたいはず。つめたいのは、子どもたち。なぜこんな国となったのだろう。


「モンスタークレイマー」という言葉をとみに見聞きする。スーパーやコンビニの店頭で大声で暴言を吐く人、店内のモノを投げる人、無理難題を要求する人に出くわすことが増えてきた。年輩者や若者が多いとか特定の世代の問題ではない。あらゆる世代の現象である。これを言ったら、それをやったら、相手がどう思うのか、どう感じるのか、傷つくのかについて想像できない人、制御できない人が増えてきた。どうなっているのだろう。これを「キレる」という言葉ですましてはいけない。SNSの世界はもっとひどい、きわめて陰湿。匿名になったら、強くなる日本。いつからこうなったのだろう。匿名の世界を飛び越える人がどんどんあらわれる。まわりに顔が見られても、公衆の面前で暴れる人が出てきた。こんな人たち、昔は滅多に見なかった。


「お客さまは神様です」と三波春夫さんが1961年に発したフレーズが日本人の「お客さま」観を大きく変えたといえる。もともと三波春夫さんのこの言葉は自分の仕事のありよう、心構えを示したものだったようだが、「売る人と買う人の構造」を大きく変える流れとなる。今から100年前にマーケティングの先駆者とされる米国の百貨店主ジョン・ワナメーカーが「消費者は王様」と言っていたようだが、三波春夫の「名台詞」の登場は、日本が売り手市場から買い手市場に向かっていた時期を大きく刺激する。その後、様々な経営者が「お客さまは王様」と発言したり「王様のレストラン」というドラマが流行したりして、 「お店<お客さま」へとどんどん変わり、お客さまの意識が「売っていただく」から「買ってやる」に変わり、ついにはモンスタークレイマーが出現したことに、三波春夫の「お客さまは神様です」の言葉がなんからの影響を与えたのは事実である。もうひとつ気になる現象がある。


「マネジメント」という言葉である。本のタイトルに、イノベーションに並び「マネジメント」という言葉がよく並ぶ。ビジネス書や経営書だけではなく、その分野以外でもよくつかわれだしている。マネジメントって、どういう意味か分からない。ちなみにマネジメントの反対語はなんだろうか?よく分からない。大学の学部・学科名にも「マネジメント」という言葉をつけるのが流行している。横文字が大好き。食マネジメント、現代マネジメント、スポーツマネジメント、芸術マネジメント ─ いったいなんだろう。なんでもかんでもマネジメント。自らがするのではなく、だれかがするのをマネジメントする。食事をつくる人をマネジメント、スポーツをする人をマネジメント、アートをする人をマネジメント、どうなっているのだろう。マネジメントする人ばかりを教育して、だれが食をつくるのか、だれがスポーツをするのか、だれがアートをするのか、訳が分からん。ロボットが何かをするのを人がマネジメントするというのだろうか。


綺麗な仕事をしたい、カッコいい仕事をしたい。しかし下積み修行はしたくない、すぐに部下をつかった仕事をしたい。そんな幻想をもつ。マネジメントの仕事ならいいが、サービス業の第一線につきたくない、営業より企画をしたい ─ そんな人ばかりでは、現場がますます弱くなる。このままでは日本はおかしくなる。どないなってんねん


エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)


日経新聞社COMEMO 1122日掲載分