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2018年10月23日 by 池永 寛明

【時間篇】 「そんなに長生きせえへんで、ええねん。80歳くらいで、ええねん」


何歳まで「生きる」と思いますか?─ 平均「80.1歳」。何歳まで「生きたい」と思いますか?─ 平均「82.5歳」。 定年前の6065歳の男女、5053歳の男女有職者へのアンケート結果である。そんなに長生きしなくてええねん、こんなんでええねんとの呟きが多かった。人生100年というが、65歳で仕事を辞めても「あと15年」ぐらいでええねん、という声を聴いた。そもそも「80歳」という年齢もすごいが


「リタイア後の準備はしてへん」─ リタイア後の準備をしましょうという「案内」が役所から会社から地域からいろいろなところから届く。6065歳の現役男女に訊くと、4人に3人が「準備」していない。5053歳の男女も、ほぼ同じ結果。


そうなんや、80歳で「死ぬ」から、会社を辞めて15年間の残り時間で、ちょうどええねん、だから準備なんかせえへんで、ええねん。しかし現役の60歳余命は男性で26年間寿命86女性で31年間寿命91だから、本人が思っている以上に、「リタイア後の時間」はおそろしく長い。なにせ「毎日が日曜日」だから大変。




「これまで会社一本でやってきたから、なにをしたらええのかわからへん。一日がとても長い」というリタイアしたOBの声をよくお聴きする。 現役組に、リタイア後になにをしたいかと訊いても、「わからへん」が6割。リタイア後にすごしている自分のイメージ(「することを考えている」と答えた4割の人)のベスト3は、①カルチャースクール ②フィットネスクラブ ③会社のOB会 である。


リタイア後の自分の姿がイメージできていないのは、6065歳、5053歳の両世代とも同じだが、興味深いのは6065歳のリタイア後の「会社のOB会」への参加しようというイメージが高いのに対して、5053歳世代は圧倒的に低い。10年若くなると、会社のOB会に参加したくないと思う層が倍増する。「社縁」のイメージ、ここで大きな断層がある。


「社縁というけど、仕事以外であまり会社の人と一緒に時間をすごしたくない」ということは、20歳と30歳台の若い人たちだけではない。5053歳においても、「社縁」で行動しようという意識が薄れている。団塊の世代から現在において、「世代間ギャップ」は各世代でおこっている。そもそも、この「世代間ギャップ」はどこから来ているのだろうか?



戦後から現在の70年間における個人と社会の関係は、「縁」を軸に大きく変化しているとよくいわれる。


戦前「血縁(一族)」と、地域のなかでの仕事の共同作業を通じた「地縁」が中心だった世界


高度経済成長故郷から都会に就職・就「社」し、生涯雇用を前提とした「社縁」と「核家族」の関係だった世界


現在家族の形が多様化、一人暮らし・単身化が進み、会社との関係(社縁)が薄れ、個人として都会における新たな縁づくりを探ろうと模索している世界


このように「個人」と社会との関係性が劇的に変化している。日本の問題は、この個人と社会の関係性の変化速度が「高齢社会への移行」とあわせ速く、個人として社会として準備ができていないことで、適合不全がおこっている。


血縁・地縁が濃縮した故郷を出て都市に来た個人が、社縁につつまれ結婚して核家族を形成し子どもたちが一人立ちし単身者が多くなっていく国、かつて週末に家族と一緒、親と一緒、近くに住むのが普通だった国から、ひとりぼっちで生活する人が過半数に近づく国にあっという間に変わろうとしている。では、どうしたらいいのだろうか?




「ひとりぼっちで生活する」人は、どんな生活をしているのだろうか?


4064歳の一人暮らしの単身者(男女)の休日の時間の使い方を調べてみた。予想どおりだが、ネット、SNSテレビ視聴の時間が圧倒的に長い。1日で6時間。起きている時間の4割、すごい。圧倒的な「個人」生活をすごす。リタイア後に大半の人がなにをするのかというイメージができていないが、「毎日が日曜日」となるリタイア後の姿をどうしていくべきか、「個人」生活中心から、個人と「社会」との関係の再構築していくかを抜本的に考えていかないといけないのではないだろうかと、これらの数字をながめながら、再確認した。「自己責任」ということで、すませられる話ではない


(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)


日経新聞社COMEMO  921掲載分