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2018年09月20日 by 池永 寛明

【起動篇】 世界に勝つ「スポーツ」にできて、ビジネスでできないはずはない。

  


スポーツの世界で、考えられないことがおこっている。水泳、池江璃花子18歳、酒井夏海17歳、渡辺香生子21歳。卓球、伊藤美誠17歳、平野美宇18歳。バドミントン、奥原希望23歳、山口香20歳。柔道、阿部一二三、21歳阿部詩18歳。フィギュアスケート、羽生結弦23歳、宇野昌麿20歳。体操、村上茉愛21歳、白井健三21歳。スノーボード、平野歩夢19歳、成田緑夢24歳。ラグビー・サッカー・400メートルリレー。アジア大会でもさらに若い人が今健闘している。将棋でも藤井聡太15歳、囲碁でも一力遼21歳。


彼らは世界に挑んで勝つ。彼らが戦っている場は、世界。世界で勝つために、勝つという目標を達成する戦略を立て、世界レベルの指導者を世界から探し、世界を練習拠点に、世界最高峰の方法論・練習プログラムを世界から学び考え、組織全体で選手を育て、勝つべく準備して、勝つ。


スポーツや芸術、芸能活動で、若い人たちがこのように、“(大変な努力をしているが表面的には)楽々”と勝ってくる。すごい若者たちが、続々とでてくる。東京オリンピックを目指して頑張っている彼らの活躍を見て、すごいと思う反面、自分とはちがう、自分には絶対ムリ、別世界のことだと思ってしまう人が沢山いる。


では、ビジネスではどうだろうか?なぜスポーツのようなすごい企業、プレイヤーが多く出てこないのだろうか。ビジネスもスポーツ同様、グローバルになっている。グローバル社会となったということは、みんな判っている。交通・物流インフラ、情報ネットワークで、世界とつながっていることは実感している。しかし世界に知られ、世界の人に支持され、「勝つ」企業や人は、日本から「続々」とは出てこない。なぜだろうか?


日本の人口は減りつづけている、少子、超高齢、単身社会に加速度的に進んでいる。これまでとは、あきらかに社会は「逆回転」している。将来はもっとそうなると、だれもが、どの企業も、そう思っている。しかし頭では、そのことは判っているけれど、現在および将来のことを「危機」「リスク」と考えて、殆どの人、殆どの企業は行動していない。日本には、まだまだ「市場」がある、日本でまだまだ十分やっていける、食べていける、わざわざしんどい想いをしてまで、外に出て行かなくても大丈夫、今までどおりの方法でやっていても大丈夫 ─ これでは、ビジネスの「金メダル」は獲れっこない。


まだまだ大丈夫だと思う空気につつまれている。昔と比べてモノが売れなくなった ─ でもまだ大丈夫、つぶれはしない。昔と比べて市場は小さくなった ─ でもまだ大丈夫、また神風は吹いてくる、現にインバウンドが増えてきたじゃないか。ライバルとの競争も厳しくなった ─ でもまだ大丈夫、今までどおりやっていたらうまくいく、今までそれで乗りこえてきた。自分が会社にいる間は、まあ大丈夫だろう。大丈夫だと思っているから、マーケット、お客さま、ライバル、関係者などの気持ち、動き、姿、変化を見ようとしない、見えていない。見ているのは自分だけ、自社だけ。そして突然、「その日」がやってくる。


あるまちに、美味しいと評判の饅頭屋があった。団子屋のおじいさんは朝からつくって、つくった分だけ売った。昔は午前中の3時間で完売していたが、正午になり、しまいに夕方までになった。息子さんの代になって、手づくりは手間がかかるので、設備を導入して機械で饅頭をつくるようになった。効率が上がり生産能力があがったので、設備投資を回収するために生産量を増やそうとする。今までのまちの、いままでのお客さまだけを対象としていたら、お客さまが減るとともに販売数が減り、さらに売れ残る。よって製造原価があがり、利益は減る。そして時がすぎて、どんどん赤字になって、従業員を減らすか、店をたたむことになる。これが現在および明日の日本の縮図。


まだまだ大丈夫ではない。「外」がどうなっているのかを見て、お客さまに選択いただけるために、自らを変化していかないといけない。スポーツにできて、ビジネスでできないわけがない。


(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)


日経新聞社COMEMO  830日掲載分