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2018年07月18日 by 池永 寛明

【起動篇】 アマゾン箱からモノタロウ箱に変わるモノづくりの現場

   


10年前まで、韓国から日本に企業ヒアリングや物件視察が多かったが、最近ぐんと減った。日本から学ぶことがなくなったという」と、日本の大学にいる韓国人の先生からお聴きした。「10年前の日本はキラキラしていたが、今の日本は古い、なによりも“暗い”イメージがする。アメリカと欧州から学べば十分だと、韓国企業の人たちは思っている」。


日本のモノづくりの現場では、取引先に部品や製品を送る仕事が多い。量産型の工場では量産用の「通い箱」をつかうが、中小企業の大半は開発型のモノづくり工場で、いろいろなものをすこしずつ取引先と送りあう。送るためには、箱がいる。かつてはミカン箱や引っ越し会社の箱を残して使っていたが、それだと相手に誤解を与える。その後、アマゾンで必要な材料を仕入れ、「アマゾン箱」を残し、その箱で関係先に送るようになった。


とはいうものの、アマゾンは雑貨や消費財など幅広い商品を扱っているので、アマゾン箱で送ると、工場の取引先から「お宅は、なに屋さん?」と思われるような感じがする。そこで「モノタロウ箱」を使うようになった。中小工場の現場では、あのボルトこのボルトこの部品が必要と、スポットで工業用間接資材の通販サイト「モノタロウ」に随時発注するので、あっという間にモノタロウ箱が工場にたまる。モノタロウ箱はモノを送りやすいように箱の形を変えられるロジスティクス用の箱となっており、「モノタロウ箱でモノを送ると、私もあなたと同じモノづくりの人なのだという心、想いが伝えられる」と、モノづくりの中小工場の社長さんとの会合で、お聴きした。


モノタロウの箱が工場に届くと、かなりの確率で、あの有名なCMソング「モノタロウ〜モノタロウ〜、工場が使う消耗品を〜ネットで注文モノタロウ〜、工場の味方モノタロウ」を口遊(ずさ)むという。工場の現場には格好いいデザインされた箱で来るよりも、赤のモノタロウ侍のユニークなモノタロウ箱の方が似合う。モノタロウのCMソングをうたいながら、“おっ!きた、きた”と微笑みながら、モノタロウ箱の梱包を解く。それだけではない。価格も工夫されている。スタンダードの「モノタロウブランド」に、激安ラインの「大阪魂ブランド」に、高品質なハイブランド「男前モノタロウ」というように、いったいなんなんだ?と思うくらい、ネーミングもユニーク。


モノタロウは中小企業のモノづくり現場の空気を捉えている。こじゃれた格好よさとか、綺麗なデザインではなく、緊張感をもって高品質なモノづくりに注力するモノづくり現場に何度も足をはこび対話をして、中小工場のモノづくりの現場に役立つ“ツボ”をおさえたビジネス展開をしている。飲食や商店のおもてなしだけでなく、工場の資材をお届けするときにも“心”を込める“商い文化”が、日本のモノづくりを支えてきた。モノタロウ〜モノタロウ〜と口遊みながら、“モノタロウ何番”とパソコンを見ながら、取り引き先と電話のやりとりをしたり、モノタロウの空き箱が並んでいたり、そのモノタロウ箱で取り引き先にモノを送る工場の姿を思い浮かべ、ビジネスを組み立てる力こそ、日本の商いの本質と感じた。


冒頭の15年間、日本にいる大学の先生である韓国人の彼女は、こうつけくわえた。「韓国企業はアメリカや欧州から学んでばかりで、日本から学ぶことはないといっているが、それは正しくない、表に見えていないが、日本人の現場への観察力に、洞察力、美的センスなどの日本の「佳さ」「強み」「本質」に、気がついていない。しかし、もっと気になることは、日本人自身が本来の自分自身の本質を忘れかけていることではないか?」と。


モノづくりの現場は、この10年、20年の技術、ITロジスティクスの急速、急激な変化で、大きく変わった。「モノタロウ箱」に、これからの「商いの心、あり方」を教えられたような気がする


(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)


日経新聞社COMEMO  518日掲載分