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2017年11月21日 by 池永 寛明

【時間篇】 竹の音を聴く住まい ─ 聴竹居を訪ねる

       

 

「その国を代表するものは住宅建築である」とは、90年前に聴竹居をつくった建築家である藤井厚二氏の言葉。晩秋の風が吹く、紅葉に映える聴竹居を竹中工務店の松隈章さんにご案内いただいた。

 

聴竹居は、京都と大阪の間の京都府大山崎町にある。同じ山崎に建つサントリー山崎蒸溜所は聴竹居の5年前の1923年に、ウイスキー製造のために良質な水を求めて山崎の地を選んだ。天下分け目の合戦があった「天王山」に聴竹居が建てられたころは、桂川、宇治川、木津川の3つの川が合流する淀川が見え、よく霧が立ち込めていたという。

 

心地よく、心があらわれる住まい ─ 大きな縁側のような場に置いている椅子に座ると、窓越しに見える樹々が絵画のように美しく見えるよう絶妙にデザインされている。

 

家族のための住まい ─ 客室よりも子どもの勉強部屋の方が大きい。居間から一段あがった食卓の角から窓を背に、すべての部屋につうじる居間が見渡せるようにレイアウトされている。子どもたち、家族が家のなかですごす姿を、見るとはなしに、微笑を浮かべながら眺めている主人である藤井厚二氏の姿が目に浮かぶ。

 

自然とともに、環境を大切にした住まい ─ 広く、大きな窓とともに、夏に湿気と熱がこもらないよう天井裏と床下を繋ぎ、風をとおして外からの風をとり入れる設備が設けられている。環境やエコという言葉がまだ日本に広がるずっと前の90年前に、海外の建築に学んだ藤井氏がみずからの住まいで「実験」した。私どもの実験住宅NEXT21が竣工する70年前のことだった。圧倒的な先駆性に驚かされる。

 

日本住宅でありつつ西洋住宅。食事室と客室に置かれた造りつけベンチは西洋的。天井には網代、窓には障子があり日本的。90年前に電気冷蔵庫と電気温水器は西洋的。電気ストーブは藤井みずからが和式にデザインしている。神棚と仏壇が壁のなかに収納され、西を向いている。住まいの各所に方位を大切にしたしつらい、四季とともに暮らせるよう絶妙なバランスのなかに聴竹居がうまれた。

 

大山崎という場所、3つの川の合流地、天王山の気候、風土、四季とともに、住まい聴竹居は息づきつづけている。長い間、日本人が大切にしてきた自然とともに暮らす生活様式に、世界からの情報、新たな技術を融合させ、新たな日本の住まいのあり方を実験した住宅が90年前に大山崎に建てられた。すごい人がいた。

 

そして、そのすごい住まいを守り、次の時代に繋ごうとする松隈章さんはじめ、聴竹居とともに生きてきた地元の人たちというすごい人たちがいた。

 

(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)

 

〔CELフェイスブック 1121日掲載分