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2017年07月07日 by 池永 寛明

【耕育篇】 42年続く「関西を考える会」を読んで(後半) 

      

  

 まちあるきがブームだ。

ブラタモリの影響もあるだろうし、圧倒的人口ボリュームのある「団塊の世代」に自由な時間がうまれたこともあるだろうが、まちをガイドに案内されて歩く人たちを多く見うける。

しかし気になることがある。古地図をもとに、かつてあった「場所」に立ち、石碑、記念碑、看板を見ても、かつてあったことのイメージが湧かない。かつてここにこういう屋敷があった、お店があった、学校があった、寺があった、川があった ─ と聞いてもイメージが湧かない。歴史的事実を教えられても、それがどういうコンテクスト(文脈、背景、意味)だったのかわからない。

 

まちづくりの議論や勉強会もブームだ。

「まちづくり」や「都市魅力」と冠をつけた講演会や勉強会やワークショップを見かけるが、出口が見えず、リアリティがない。

そこで議論されているのは、どこの都市・地域でも通用することばかり、どこかであったアイデアばかり。

ずばり「必然」がない。その都市・地域の位置する「場所性」に歩いてきた「歴史の糸」が織り込まれた、そこにしかない「物語」が聴こえてこない。あまりに現代が過去と切れているとともに「必然」がない。

 

たとえば、「エリアマネジメント」いう言葉がまちづくりの議論でよく出てくる。

人口減に伴う自治体の財政難から民間の力で地域力を創りあげ、地域の魅力を高める仕組みとして「エリアマネジメントが必要なのだ」という答えが短絡的にひきだされる。先行しているニューヨーク市などの事例を学ぶべきだという声があがる。外に学ぶことは大切ではあるが、そもそも自治のあり方、地域性、歴史性がちがうなど、コンテクストを無視して「制度や仕組み」だけ導入しても、適合不全がおきるだけだ。

 

たとえば大阪ならば150年前まで大坂三郷の600町がそれぞれ自治組織を運営し、独自に経済・学問・文化を耕しつづけてきた。かつて自らのまちで確実にあったこと、仕組みを学ばずに外の方法論だけ移入しても、大阪という「場」に根づき育つかどうかはわからない。大切なのは、その「場」で、かつてどういう人たちがいて、どう生活してきたのか、そして今、どんな人が住んでいて、今どうなっていて、これからどういう「場」であれば、自分自身がそこに住みたい、働きたい、訪れたい「場」となるのかを考えるべきだ。その場のイメージが描けていないので、表層的に出口のない、評論家的で無責任なまちづくり議論になってしまう。

 

明治安田生命保険相互会社 大阪本部の「関西を考える会」活動を42年間も、関西と真正面に向かい合い、関西の本質を様々な角度から縦横無尽に掘りおこして、多面的な関西の姿を見える化している。毎年発行される冊子の内容は深い。

 

この2年間の「関西を考える会」が地域ベースに集めた記録、記憶は、関西という場の過去から未来に向けた潮流のアーカイブとなる。この42年の冊子・データはこれからの都市・地域戦略に必ず活かされるものと信じる。

 

今年度の「関西を考える会」のテーマ「ここぞ関西、だけでない関西」に私も、2件目の風景を寄稿させていただいた。

 

「兵庫県佐用市平福の風景」

 

平福という地名は心をゆるめる。

平福をつつむ利神山には山城があった。かつてあった天守は朝霧の上に浮き「雲突城」と呼ばれた。山麓に城主屋敷と武家町が形成されたが、今は田畑と智頭急行の線路に変わった。江戸時代に瀬戸内海の坂越から千種川・佐用川を高瀬舟が運んだ海産物を交易した白い土蔵倉が今も残っている。この川で洗濯する営みをする人々、盆に精霊流しをする人たちを子ども時代に見たことをおぼえている。

1.2kmの平福の街道を歩くと、因幡街道最大の宿場町だったという「江戸時代のまち」を浮きあがらせる。8割が屋号がついた商家だった建物と、古い歴史をもつ社寺が平福の街のいたるところに並ぶ。圧倒的「静謐な街」と「江戸の空気を濃密に感じる街」は訪れる人の心の重荷を解きはなつ。平福という言葉が似合う街。

 

明治安田生命 「関西を考える会」

http://www.meijiyasuda.co.jp/enjoy/kansai/

 

(エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明)

 

〔CELフェイスブック 78掲載分

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