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2017年04月17日 by 池永 寛明

【耕育篇】 えべっさんはどこから来たのか?

     

 

えべっさんは東京ではあまり知られていない。数年前に東京に住んでいたとき、JR山手線の恵比寿駅を通るたびに「ヱビスビールのCM曲」が流れていたので、えべっさんは全国区なのだと思っていた。

 

10日の早朝に、西宮神社の開門神事で足自慢が境内参道200mを疾駆して福男選びをするニュースが全国ネットで流れる。西宮、今宮戎、堀川戎、京都ゑびす神社などで開催される1月10日の福笹の「十日戎=商売の神=えべっさん」は関西が中心で、東京の商売繁盛は熊手の「酉の市」と受け止める人が関東に多かった。

 

歴史的には「えびす講」が室町時代以降に、農民・漁師・商人の間で「五穀豊穣・大漁・商売繁盛」祈願としての信仰として広がり、えびす講の祭礼日として旧暦の10月20日は百姓えびす、1月10日は商人えびすとして全国に広がった。

 

そのなかで「誓文払い」という名の行事がうまれる。江戸時代に京都と大坂の商店で年に一度の安売り。今でいうバーゲンセールだが、えびす講の10月20日に、商売上の駆け引きでお客さまを欺いた罪を払い神罰を免れることを祈る目的で誓文払いが始まった。いまもバーゲンセールとして商店での取り組みは続いているが、もともとは「えびす講」「蛭子市」から始まった。

 

そのえびすは、蛭子(ひるこ)とも言われ、平安時代の歌人 大江朝綱の歌が有名。

 

たらちねはいかにあはれと思ふらん三年に成りぬ足たたずして」

 

えびすの物語。両足がなく生まれ親に捨てられ海に流されたえびす、またの名をヒルコ。えびすが流れ着いたのが西宮浜。全国のえびす神社の本社は西宮神社。西宮神社の主祭神は西宮大神で「蛭子命」である。

 

古代の物話。神に流された不具のえびすは、瀬戸内を東に流れ西宮に辿り着く。摂津の人たちはその子を「神」として温かく受け入れた。新たなもの、異なるものは海から来るとの伝承や、祭りが各地に多く残っているが、古代の人たちがえびす、蛭子を受容し抱擁する姿は、異なる姿・言葉をもつ海から来た人を受け入れた姿と重なる。優れた技術・文明を備えた渡来人を歓迎し、受け入れ、恭しく称える。 日本文化のつくり方(守・破・離)の原型と感じる

 

新たなもの、異なるものに真の力を見出し、受け入れ、敬い、奉る。そして、その力を自らの力に換え(トランス)、商いや海運など「天運」にかかる事柄に、不具ながらも流れ着き、神として祀られるえびす、蛭子の強運の導きを仰ぎ、さらに 西宮の地から「えびすき」という人形芝居(文楽・浄瑠璃のルーツ)をしながら全国行脚して「えびす信仰」を広げていった。えびす信仰を人形浄瑠璃という方法論を用いて普及させた編集力、プロデューサー機能に学ぶことが多い。

 

子どもを捨てる神話は世界に多くあるが、障害があって捨てられるという神話があるのは日本だけ。古代から敗者への温かい目線をえべっさんに感じる。

 

エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明

 

〔CELフェイスブック 410日掲載分改