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2017年04月04日 by 池永 寛明

【耕育篇】 訪れ神「なまはげ」を考える

     

 

1年の変わり目の大晦日の夜、おそろしい面をかぶり出刃包丁や棒などを持ち、うおーうおーと唸るような奇声をあげ荒々しく四股を踏み、家にあがり、部屋をぐるぐるとまわり、「泣ぐ子はいねか〜」となまけものを探し、こらしめていく。年神、訪れ神として有名な秋田県男鹿半島のなまはげ。有名な話だが、1970年の大阪万博の「太陽の塔」を岡本太郎が着想する際のヒントとなったとのこと。

 

なまはげは“ナマハギ”“ナマミハギ”という語からきている

に仕事もせず囲炉裏の火にあたってばかりいて手足にできる「火型」を、鬼が包丁で剥ぎ取り、怠け者を懲らしめていくことからきている。もともとはそういうストーリー。年の変わり目に家々に訪れるなまはげは、その年の豊作や大漁を約束する神であるため、なまはげは神なのか鬼なのか、その両面をもっている。

 

なまはげは秋田県男鹿市中心に85地区で行われている。

お面、扮装や、装束、持ち物はそれぞれ地域ごとに異なっており、秋田県内の他の地区で「ヤマハゲ」「ナゴメハギ」「アマハゲ」など様々な名前で呼ばれているが、海岸部中心になまはげが行なわれている。

 

なまはげはいったい何者なんだろう

武帝が五鬼を従えて男鹿に渡ってきたという説、②男鹿の山に住む村人を守る神だという説、③赤い顔、長い髪、彫の深い風貌から、船の難破により男鹿の海岸に漂着した外国人が大声で叫ぶ様が鬼に見えたからという説、④男鹿には本山と真山と「お山」と崇められている2つの山があり、熊野の修験道の霊場として修行していた山伏がなまはげに見えたのだという説など色々ある。

 

恐ろしいものが家々を訪れて歩く「訪れ神」は、秋田だけでなく青森や山形、北陸、瀬戸内海、九州、沖縄まで広く広がっている。日本地図で分布状況を見ると、この「訪れ神」という習俗は比較的海岸地域に多い。舟による海路ネットワークによりこの習俗が広がったのではないだろうかと想像され、つくづく日本は海洋文化だと感じた

「訪れ神」は祭りの日に遠いところから訪れる。神は笠をかぶり顔が見えなかったり、威厳のある面をつけたり、おそろしい装束であらわれたりする。人々はこの神を饗応にてもてなす。神は人々の長寿を、生活や生産が豊かであることを祈る。地域によって弥勒の神、恵比寿、大黒、不動明王、七福神など様々な神が人々の暮らしのなかに訪れる。それぞれの神は日本古来の神、仏教、ヒンドゥー教、道教の神などグローバル。海からやってくる人との共生の歴史を感じさせる。

 

ともあれ「なまはげ」である。なまはげは秋田空港、男鹿駅、観光センターなど、秋田県の各地に置かれている。男鹿真山伝承館には、男鹿市内各地で使われていたなまはげ150体が勢揃いしており、訪れる私たちを一斉に見つめる。そして復元された男鹿地方の典家民家で毎日「なまはげ」行事がおこなわれ、伝統的かつ正統的なまはげ習俗伝えられる

 

本物のなまはげが家に入り、入る時に七回、座るときに五回、出て行くときに三回と753と四股を踏み、家の中を歩き、怠け者を探しまわる。家の主人からの食事を供され、なまはげによる家人に詰問が行われる。なまはげの大きな声、動作に驚かされる。泣き叫ぶ子どももいる。

 

なまはげが家人との会話を終えると来年も来るからと言ってまた四股を踏み家から出ていく。なまはげが体にまとっている藁を「ケデ」という神聖なもので、家中を歩き廻り四股を踏んで藁が散乱する。この藁は縁がよいものとして、翌朝まで掃除をせずに、翌日になってこのわらを頭や患部に巻きつけると、病気が治るという言い伝えがある。私もなまはげが落とした藁を貰い保管している。

 

エネルギー・文化研究所 所長 池永寛明

 

〔CELフェイスブック 317掲載分