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2011年09月19日 by 豊田 尚吾

高齢者の幸福度は低いのか

前々回(912日)のコラム「社会の厚生向上に資するか、幸福度指標」で、幸福に関する研究会(内閣府)の報告書について述べました。今回はその幸福感と高齢化(年齢)について考えて見たいと思います。幸福に関する研究会の報告書(案)1213ページには、「年齢と幸福度」と題して両者の関係(国際比較)が論じられています。

 

主観的幸福度を調査すると、諸外国(おそらく主に欧米)では若いときに幸福度が高く、それが徐々に低下していく。そして40歳ぐらいで底をついた後は、また年を重ねるにつれて幸福度が上昇していく。一方、日本において、若年層の幸福度が高く、歳をとるに従って幸福度が低下していくことは欧米と同様であるが、高齢になっても幸福度が高まらず低迷する(底を這うような感じ)点に特徴があるとされています。年齢を横軸にとり、幸福度を縦軸にとったとき、欧米の幸福度がU字型を描くのに対し、日本のそれはL字型、あるいはしの字型を描くということになります(報告書の13ページに、平成20年版国民生活白書に掲載された、米国と日本の幸福度推移の図が引用されています)。

 

ただ、それは必ずしも長期にわたって不変の構造であるとは限りません。そこで、エネルギー・文化研究所が調査したデータで検証してみました。

 

用いたデータは二種類です。一つはこのWEBサイトでも調査結果を掲載し、当研究所が発行している季刊誌CELにおいても分析結果を紹介している、「これからの住まいとライフスタイルに関する生活意識調査」のデータ(2011年調査:調査方法は郵送調査)です。この調査では幸福度を7段階でたずねています

 

もう一つはWEBアンケート調査です。これはディスカッションペーパーの仮説検証用データなどに利用しているものです。ここでも幸福度を7段階でたずねています。では、これらのデータでも日本の幸福度は年齢に関してL字型を描くのでしょうか。

 

結果的には興味深い結果が得られました(下図:変動をスムーズにするために人数の重み付けをした上での5カ年の移動平均値を用いています)。まず、50歳前後の幸福度が総じて低いということはどちらのデータを用いても確かめることができます。その他に関しては二つのデータで異なる結果が得られました。まず、同じ聞き方をしているにもかかわらず幸福度の水準が異なっています。とても幸せを7点、とても不幸せを1点(どちらともいえない4点)とすると、郵送調査では年齢後との移動平均値の最低値が487、最高値が564であるのに対し、WEB調査では同じく最低が437、最高が485と、水準も変動幅も異なっています。

 

 

また、郵送調査では20代が低く30代前半がピーク、そして徐々に幸福度は下がっていき40代後半が底、それ以降多少幸福度は改善しますが上がり方は緩慢です。L字型とまではいきませんが、確かに高齢者の幸福度はそれほど高くありません。また、若年者の幸福度が低いことは世相を反映しているのかもしれません。

 

一方、WEB調査の方は形状が異なります。20歳代から40歳代前半までは比較的平坦で、やはり40代中盤あたりから幸福度は減少します。しかしながら高齢になるほど幸福度は上昇していきます。これを見ると欧米の幸福度の推移(U字型というよりはJに近いですが)と似ています。結局幸福度という質問に関しては、二つの回答者は異なる集団からなっているという判断が妥当かと思います。では、どちらが本当の母集団(国民全体)の姿を反映しているのでしょうか? もしかしたら、どちらも偏りを持ったデータだという可能性もあります。

 

 

まず、ネットアンケートのモニターに関して、高齢者のモニター(サンプル)がその母集団、つまり日本の高齢者の平均像を代表できているのか、といえば確かに疑問はあります。現在、60歳以上、あるいは65歳以上でパソコンを使いこなし、かつ自主的にネットアンケートのモニターになろうという気になる高齢者は、かなり前向きで積極的、知的水準もその年齢の平均よりは高いかもしれないという仮説設定を持つことができます。その結果として幸福度が高くなっているのかもしれません。

 

しかし、郵送調査のサンプルにも問題がないとはいえません。昨年までは留置調査で各家庭を訪問しておりましたので、在宅率の高い方が回答してくださるケースが多くなります。今年は郵送調査ですので、手間のかかる返送をしてくださる方という点で、生活者の平均像から乖離する場合があるかもしれません。

 

いずれにせよ、分散値や性別なども含め、もう少し精査する必要がありそうです。ただ、年齢を考慮しない、幸福度のデータ自体の分布は両者ともおかしな形をしているわけではありませんので、無意味な数値(データ)ではないと考えています。

 

この二つのデータに一定の真実が含まれているとするならば、もしかしたら若年者の間に幸福度を下げる要因(例えば雇用環境の悪化など)が社会全体に蔓延しつつあるのかもしれませんし、高齢期の幸福度は欧米並みに上がりつつあるのかもしれません。そのような変化の兆候が各調査のデータに表れているのではないかとの問題意識を持つことができました。

 

この結果は色々と自由な解釈が可能なようにも思います。これをご覧になって、それぞれに仮説や問題意識を持っていただければ幸いです。

 

※「これからの住まいとライフスタイルに関する意識調査」について、10月には今年調査分の結果をWEBで公開します。また、調査の結果概要と、個々の分析に関しましては、101日発行予定の季刊誌CEL97号に掲載します。